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「新しい資本主義」とは結局何なのか?自民党の討議資料から考える/倉山満

「新しい資本主義」とは「竹中的な政策の是正」程度の意味

 こうした傾向にメスを入れたのが、イギリスのマーガレット・サッチャーであり、アメリカのロナルド・レーガンだった。サッチャーやレーガンは、国力の基礎は経済であると見抜いた。その為には、規制を緩和し、可能な限り税負担を無くし、民間の活力を強くして経済を成長させること自体が、国力を高める方策だと、信じた。こうした姿勢に対し、「新自由主義」のレッテルが貼られた。同時代の中曽根康弘も、新自由主義者とされることもある。  もともと「新自由主義」はレッテル張りであり、本来の自由主義とどう違うのかの理論的検証はない。むしろ、スミスの説いた本来の自由主義への原点回帰の傾向が強い。  日本における新自由主義者の代表と目されるのが、竹中平蔵と小泉純一郎である。曰く、「小泉内閣で民営化と規制緩和が推し進められ、格差社会が広がった」とされる。このような雑な定義はまだマシで、「新自由主義とは竹中がやったこと」と言い張って恥じない御仁すらいる。レーガン・サッチャー・タケナカ……小泉どころか中曽根をも飛び越える大物ぶりである。「どれだけ竹中さん人気者なんだ?」と言いたいが、かなりの数の国会議員が、このレベルの認識なのだから頭が痛い。  要するに、岸田首相の言う「新しい資本主義」など、「竹中的な政策の是正」くらいの意味しかないのだ。

岸田首相はスミスとケインズのいいとこどりか?

 根幹となる用語の定義が意味不明なので、「新しい資本主義」が何なのかなど、わかるはずがない。と投げ出しては始まらないので、我慢して自民党の討議資料を読んだ。  一応、ここまで定義したような内容が書いてある。  ただ、岸田首相は「両岸」と名付けた方がよさそうだ。堂々と「市場も国家も」などと宣言している。スミスとケインズをいいとこどり?  しかも理念と現状認識が整理されておらず、それを読み取るのも相当な力技だったが。冒頭に一応の理念の定義らしき作文があって登場するのが、「経済安全保障の徹底」である。どこをどう読んでも、新しい資本主義を実現するには経済安全保障の徹底が条件としか読めない。
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政治と行政の区別がつかない「自民党病」
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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