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国際情勢が揺らぐなか、いま日本がすべきこと/倉山満

危機が喫緊なのに、なぜ「5」年なのか

 昭和20年5月、同盟国のドイツは無条件降伏。日本も敗色濃厚だった。心ある人は「ソ連はドイツを倒した。次は日本を滅ぼそうと、既に動き始めた!」と警告していた。しかし、軍と政府の大勢は、「ソ連は秋まで攻めてこない」だった。それどころか「中立条約を結んでいる仲だ」と和平交渉まで依頼していた。  結果、8月に中立条約を破棄して我が国に攻め込み、阿鼻叫喚の大量殺戮。女は犯され、生き残った男はシベリアに拉致されて奴隷労働となった。
言論ストロングスタイル プーチン

3月7日、ロシア政府が日本を「非友好的な国と地域」に指定。5月4日には、制裁措置への報復として、岸田文雄首相をはじめとする63人の日本人入国禁止リストを公表している 写真/時事通信社

 何の根拠もない楽観論は、悲劇を招く。  最近、自民党が政府に立派な提言をした。これまでの防衛政策を根本的に見直そうとの主張で、多くの具体策が挙げられている。では、その裏付けとなる予算はどうか。「防衛費GDP2%を5年以内に」だ。  同提言書では、我が国の安全保障環境は喫緊の危機にあるとの情勢分析が並べられている。では、危機が喫緊なのに、なぜ「5」年なのか。

日本は中立国ではない。ロシアの敵国だ

「ソ連は秋まで攻めてこない」と同じにならないように祈るしかない。日本はウクライナと違ってアメリカと同盟を結んでいるが、自分の国を自分で守る気が無いのに、アメリカが真剣に戦う訳が無い。  国家を支えるのは、知力・財力・武力だ。物質力は今すぐに整備できないが、知力はやる気次第だ。  そもそも、今次ウクライナ紛争で日本は中立国ではない。ロシアは「非友好国」と認定してくれた。つまり敵国だ。アメリカについていくと決めた以上、覚悟を決めて対処するしかない。

もし、プーチンがハッカーに報復したら、自己責任で終わるのか?

 我が国が貢献できるのは、国際法の分野だ。国際法は別名「文明国間の法」だ。日本は国際法の優等生だ。今次紛争でも、国際法は武器として機能している。この紛争で何が起きているかを見極めるためにも、国際法の考察は重要だ。  国際法は、「平時と戦時」「味方と敵と中立」「戦闘員と非戦闘員」「戦闘地域と非戦闘地域」の区別を求める。同時に、兵器や戦術の発達とともに変化する。  たとえば、ハッカーの扱いだ。現代戦の初動では、ハッキングが重要となる。しかも、1945年以降は宣戦布告なしに殺し合いが始まる。初動でハッキングに成功するか否かは、戦局全体に影響する。ロシアはクリミアでは大成功したが、今回は失敗して大苦戦だ。それどころか、ハッカーに苦しめられている。  では、ハッカーに、戦闘員の資格を定めたジュネーブ条約を適用できるか。国際法を守る、指揮官の下で統制されている、標章(ワッペン)によって非戦闘員と区別できる……ロシアを苦しめているアノニマスはどれも守っていない(苦笑)。プーチンが彼らに報復した場合、自己責任で終わりだろうか。いまだ確立した国際法はなく、議論も少ない。
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現代戦において、戦闘員と非戦闘員をどう区別するか
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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