サカナクション山口一郎の「燃え尽き」休養。心が壊れるスターたちの苦渋
5人組ロックバンド「サカナクション」のフロントマンの山口一郎が、体調不良のため当面の間休養することになりました。今年の5月から倦怠感と疲労を抱えながら活動してきたものの、6月下旬にドクターストップ。今回の決断に至ったとのことです。
所属事務所からの発表があった7月1日に、自身のツイッターアカウントで「コロナ禍で頑張りすぎたのか燃え尽き症候群だったみたい」とコメントした山口。以前から度重なる偏頭痛や帯状疱疹に悩まされてきたこともあり、多くのファンが心配しています。
「アルクアラウンド」や「新宝島」などのヒット曲を持ち、2013年には紅白歌合戦に出場し、名実共に日本を代表するバンドとなった彼ら。
一方、ライブでは大量のスピーカーを配置して音響へのこだわりを見せたり、色鮮やかな照明や現代アートを意識した演出を施したりして、コアな音楽ファンを驚かせてきました。
音楽活動以外でも、『シュガー&シュガー』(Eテレ)や『NFパンチ』(スペースシャワーTV)などのテレビ番組で、80年代のニューアカデミズムをオマージュした“エセ教養バラエティ”までやってのけるバイタリティ。それゆえに、山口の休養は残念なニュースでした。
そこで気になるのは、「燃え尽き症候群」と明言した山口の状況です。いまの時代、ミュージシャンにとってメンタルヘルスは避けて通れない問題だからです。
たとえば、理想とされるミュージシャン像を考えてみましょう。良い作品を作るのは当然のこととして、ひとつひとつの発言に社会的な正当性や意義を持たせられる人格の持ち主を思い浮かべないでしょうか。SNS上でもファンやメディアを相手にそうした意識の高さを示し続けなければならない。
このように、公私の境目がほぼなくなった状態でONとOFFの切り替えもできないまま、常に“立派なアーティスト”であることを求められてしまうのですね。
そうした切迫感は、サカナクションの楽曲やMVにも現れています。「忘れられないの」や「新宝島」、「ショック」などで、どれだけパロディをしたりユーモアを交えたりしても、律儀な職人気質が残る。わざとぎこちなく踊ったり、大げさに表情を作ったりする丁寧さを見るほどに、おかしみから遠ざかっていくのですね。
手取り足取り注釈をつける作風は親切ですし、リスナーの間口を広げるきっかけにもなるでしょう。けれども、生真面目さがいい加減の抜け感を潰してしまう。メタ批評的な引きの視点を追求するほどに、身動きが取れなくなっていくわけです。
Twitterに「燃え尽き症候群だったみたい」
“正しい人格”を求められる窮屈さ
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