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北野日奈子「まだセクシーというものがわからない」乃木坂卒業後の新境地

 今年4月末に乃木坂46を卒業した北野日奈子が出演する舞台『蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く』(東京・紀伊國屋ホール)が、7月8日に幕を上げた。同舞台は、“演劇界の風雲児”として知られた劇作家・つかこうへいの代表作『蒲田行進曲』の続編を描いた物語。北野は、主人公の銀幕スター銀ちゃんを一途に慕いながらも、その子分のヤスにも心が揺れ動くヒロイン・小夏を演じる。  乃木坂46を卒業してから初の舞台出演に挑む彼女に今作への意気込み、グループからソロ活動での変化、今後の目標などについて話してもらった。

「セリフは400倍あるから」と言われて

――今作の出演オファーをもらったときの心境から教えてください。 北野日奈子(以下、北野):自分の体の軸が震えた感覚があって、最初は声が出なかったです。このお話をもらう少し前にスタッフさんから「最初に舞台をやってみるのはいいかもしれないね」ということは言われていて、私も舞台が好きだから「頑張ります!」って答えていて。その一週間後に聞いたから、ヤバい!という気持ちでした。 ――作品自体は知っていましたか? 北野:しっかり見たことはなかったんですが、主題歌が蒲田駅の発車メロディになっているのは知っていました。家に帰って舞台のことを両親に話したら声をひっくり返して、私以上に驚いてましたね(笑)。  それから最初のビジュアル撮影のときに、演出の岡村さんにお会いしたときに「舞台の経験はある?」って聞かれて、「乃木坂46のグループでやった舞台だけ経験があります」という話をしたら、「じゃあセリフはそのときの400倍ぐらいあるからね」と言われて。後日、台本をもらって見たら、本当に400倍ぐらいの量で。最初は『あぁ……』って途方に暮れてました。

まだセクシーというものがわからない

――北野さんが演じる小夏は、複雑な恋心を表現する役どころ。稽古が始める前には、「大人の魅力を兼ね備えた女性だけど、私はまだセクシーというものがわからなくて」という話もされていましたけど、役作りはどうですか? 北野:映画版の『蒲田行進曲』で松坂慶子さんが演じられていた小夏の印象が強くて、セクシーな女性だなという印象があったんです。でも稽古が始まったら、セクシーに関しては何も言われなくて。私が求められているのはセクシーな女性ではなく、銀ちゃんを一途に思う小夏なんだなと。最初にセクシーがどうのこうの言っていた自分が恥ずかしいです(笑) ――岡村さんにはどのような演技指導をされていますか? 北野:毎日のように言わているのは、「銀ちゃんを演じる味方(良介)さんのセリフをちゃんと聞いて理解して、そのうえで自分の気持ちを乗せながらしゃべって」とアドバイスを受けているのですが、それが難しくて。今まで男性を一途に追いかける経験をしてこなかったから、小夏を完全に理解しきれないところもあります。なおかつ、小夏はヤスさんに対しても気持ちが動いていく。そういう人の心の移ろいをお芝居で表現するのは大変だなと痛感しています。 ――それに加えて、今回は殺陣もあるんですよね。 北野:はい……。もう体中が筋肉痛です(笑)。殺陣は乃木坂で9年間ダンスを覚えてきたので、手順としては覚えられるんですよね。でも殺陣はダンスと違って音楽に合わせるわけではないし、相手の呼吸や動きを読みながら行うので、毎回少しずつ受けるタイミングも変わってきます。それも私にとって大きな壁でした。 ――まだまだ余裕は感じられないと。 北野 そうですね。稽古中も私のセリフのところで止まって、「小夏さんは今こういう感情だと思うよ」っていうのを岡村さんに言っていただいていて。周りの役者の方たちも、セリフが私に届くように何倍も表現を大きくして演じてくださっているんです。そういう気持ちに感謝をしながら、足を引っ張ってしまわないように、稽古前は「今日はみなさんの後ろにしっかり付いていくぞ!」と、自分に気合いを入れて励んでいます。
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アイドルでいる自分以外を想像できなかった
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