謎の食べ物が…連載後もネタは絶えない
清野とおる氏とパリッコ氏の、酒呑みの旅はまだまだ続いていく
ーー最近もお二人で飲みに行きましたか?
清野:この間も、本の発売前にサイン入れ作業をした後、パリッコさんと2人で帰りに飲み歩きましたね。浜松町から電車で大塚へ移動して、本当に打ち上げ的な感じで、面白いことも別に何も求めてなかったんですけど、やっぱり何かありましたもんね。
パリッコ:ありましたね。
清野:最初の一軒目は本当に美味しいビールを飲みたいということで、失敗したくなかったんですよ。大塚から歩いて。もう何キロ歩いたんだろう。
パリッコ:もうどっか適当に入っちゃえばいいのに、なんか1時間くらいは歩いてましたよね。最初の一杯のために。
清野:大塚から池袋まで一駅歩いて、なんでもないけどちゃんとしてるお店に入ったら、カウンターの一番奥でおじさん2人が、謎の食べ物の話をしていて。会話で情報が入ってはくるんですけど、何食ってるのか全然わからないんですよ(笑)
パリッコ:みんな知ってるようなテイで話してるんだけどね。「今が旬だよなー」「歯ごたえがたまんないよな」とか言っているけど何なのか全然わかんない。
清野:毒がどうこうとかも言ってて。トイレに行くふりして、さりげなく小皿を見たんですけど、黒くてべちょべちょした薄気味悪いものが小皿に乗っかってて、やっぱり全然わかんないんですよ。“クラムボン”(宮沢賢治の短編「やまなし」に出てくる謎の生物)ってあるじゃないですか。あれを連想したんですけどね。そんなのこの世にあったっけっていう。
パリッコ:連載だったら「何食ってるんですか」って聞きますけどね。その時はもう謎のままで終わらせてしまいました。
ーーコロナ禍で飲み会の機会が減って、飲みに行くことが億劫になってしまったっていう声もよく聞きます。そんな人に伝えたいことはありますか?
清野:僕もその1人なんですけど、全然好きにすればいいって思いますよ。むしろ、コロナ禍と言われている状況が非常に心地良くて、外で飲む回数が減った分、たまに飲んだときのありがたみとかもわかりますし。お店は大変だと思いますけど、家で1人になって飲む時間もそれはそれで楽しいですし。時間が有意義になったと思いますね。
パリッコ:昔は、打ち合わせも取材も、何もかも飲みながらやっていましたからね。何か人として不自然だったんじゃないかってすごい思いますよ。そこまでして、打ち合わせで飲まなくてもって。
清野:己にノルマを課してましたよね。
パリッコ:そうですね。翌朝、ベロベロになりながら原稿を書くみたいな。無茶だし、無理してましたよ。店の人にはね、本当に頑張ってるから、飲みには行きたいんですけど。応援したくても行けなかったりするし。「頑張ってください」としか言えないんですけどね。でも、この連載を読んだ人が結構お店に行ってくれたり、店の人が記事をプリントして店に貼ってくれたりしてるみたいで、嬉しいですね。
ーー掲載されているお店で、また行きたいところはどこですか?
パリッコ:全部巡りたいぐらいだけど、しいて言うなら、酒場で出会ってその日に家にまで上げてくれた、小林一家のウチかな(笑)。
清野:あとはまぁ、「青井」ですかね(笑)。
<取材・文/ツマミ具依 撮影/林 紘輝>
企画や体験レポートを好むフリーライター。週1で歌舞伎町のバーに在籍。Twitter:
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