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トー横キッズ小説の著者が考える、封鎖されたトー横と居場所なき若者たちのこれから

締め出しにあったトー横キッズたち

「トー横」と呼ばれる歌舞伎町のシネシティ広場が、2023年末に封鎖された。大量のフェンスや花壇を組み合わせた障害物が置かれ、居場所を求めてそこに集う若者たち、通称トー横キッズらは、移動を余儀なくされた。行政の貼り紙によると「フォトスポット設置の準備」のためだというが、これは実質締め出しなのではないかという声も大きい。  作家の橋爪駿輝氏は、トー横キッズたちのリアルを鮮烈に描いた小説『愛(かな)しみに溺レル』を上梓したばかり。居場所なき若者たちの叫びを掬い取った本作には、EXITの兼近大樹氏や、作家のカツセマサヒコ氏も推薦コメントを寄せるなど話題を呼んでいる。
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『愛しみに溺レル』(扶桑社刊)

――私達は、居場所を求めて荒ぶり彷徨う人間を、手遅れだと決めつけ線を引き、関わらないようにして生きている。彼等をなんとなく批判し、軽蔑するからこそ真っ当とされ、社会に馴染めている適当さに辟易する。年齢問わず確かにそこにある鬱屈とした気持ちに、歩み寄れる人であろうと改めて感じた。(兼近大樹)
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『愛しみに溺レル』にコメントを寄せた兼近大樹氏

――これが新宿の片隅のリアル。どこまでも希望のない物語だ。だからこそ、深く胸を穿つ。(カツセマサヒコ)  何人ものトー横キッズに取材を重ねて本作を書き上げた橋爪氏に、トー横のこれからを聞いた。

場所をふさぐことで解決はしない

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2023年12月18日の昼過ぎに、トー横と呼ばれるシネシティ広場の一部が封鎖された

――トー横の封鎖についてどう思われましたか? 橋爪駿輝:(以下、橋爪)もしトー横キッズを社会問題と見るとしたら、トー横という場所自体を封鎖することは、向き合い方として違うのではないかと思います。行政にトー横キッズを締め出す意図はないのかもしれませんが、トー横を居場所にしている人がいることは紛れもない事実です。  例えば東京オリンピックのときに、ホームレスの人たちに立ち退き勧告をして追いやったように、この国は“見えないように隠す”という手段をやりがちだとは感じています。しかし、それは表面上で隠しただけで、本質的な解決ではないしょう。  よく言われることではありますが、歌舞伎町にいられなくなったとしても、彼・彼女たちは別の居場所を探すだけ。大阪にはグリ下界隈、福岡には警固界隈という場所ができたように、場所をふさぐことで解決することはなく、全国に居場所を求めて同様の場所が生まれています。
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掲示された貼り紙には、フォトスポットの設置のためとある

 実際、歌舞伎町タワーがオープンした当初、『トー横がなくなるのかな?』と不安に思う人の声も聞いた一方で、『あの広場がなくなったら別の場所を探すだけだから』とドライな声もあった。まさにそういうことだと思います。  別に物理的な居場所を求めてるわけではなく、精神的な居場所が欲しいのだと思います。もっと言えば、“自分がいたい場所”、というよりは“自分がいていい場所”を求めている。小説を書く上でいろんな人にお話を聞いた中で、それは痛いほど伝わってきました。
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「トー横は誰のものか」に違和感
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企画や体験レポートを好むフリーライター。週1で歌舞伎町のバーに在籍。Twitter:@tsumami_gui_

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愛しみに溺レル

よるべなき若者たちの孤独と、痛みと、共生を活写した鮮烈な「トー横文学」の誕生!
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