フィリピンの水上スラムで“救われた”28歳男性の恩返し。今では「日本人を歓迎してくれる環境」に
親日国といえば、どこの国を思い浮かべるだろうか。アウンコンサルティング株式会社が今年発表した「日本への好感度を持つ国・地域ランキング」によると、世界14の国・地域のなかで、最高値の77.1%の「大好き」を示したのが、フィリピンだった。
フィリピンといえば、セブ島やマクタン島などのリゾート地で有名だが、セブ市内にある人口約3000人の水上スラム・バジャウ村をご存じだろうか。
バジャウ村には、唯一外国人を受け入れる日本人向けのゲストハウスがあり、“世界一日本人に優しいスラム街”ともいえる。そのゲストハウスを作ったのが、NGOバジャウ代表のけいすけさん(28歳)だ。ゴミの山に囲まれるなか、その経緯を聞くとカルチャーショックの連続だった。
それにしても、辺り一面のゴミに圧倒されてしまうが、なぜこうなってしまったのだろうか。
「バジャウ族は、漂海民と呼ばれ、もとは船の上で漁をして暮らしていたルーツがあります。今は海沿いに家を建てて生活していますが、セブ島の都市開発や環境汚染の影響で、周囲の海や川にゴミが流れつくようになりました。魚がいる綺麗な海まではガソリン代がかかることから、昔のように毎日漁をすることはできず、道端での物乞いや小物販売をして日銭を稼ぐ人が大半です」
ケイスケさんがバジャウ村に初めて訪れたのは、8年前。短期の語学留学でセブ島に行ったときのことだった。
「大学生だった当時、バックパック旅行にハマり、何か面白い場所はないかと海外の情報を毎日のように調べていました。その時にセブ島にバジャウ族という民族がいることを知り、語学留学もかねて行ってみることに。
当時は衝撃を受けましたね。こんなゴミに囲まれた衛生環境が悪い海の上で暮らしていて、その日食べるお金がないほど貧しい時もあるのに、バジャウ族の村は、みんな優しくてアットホームで意心地がよい場所でした。初めて行ったのに、まるで地元に帰ったかのような気持ち。そして、皆で生きていくんだという空気、バジャウ族同士での助け合いの精神がしばしば垣間見えていました」
その後、語学学校の最終日を迎え、セブ島を旅立とうとしたとき、思いもよらぬトラブルに巻き込まれてしまう。
「語学留学の2週間目に、ショッピングモールで知り合った家族に自宅に招かれてランチをごちそうになりました。『カジノしないか?』と誘われ、絶対に勝てる必勝法があると口車に乗せられてATMでお金を下ろし、全財産の約60万円を預けてしまったんです。後日、連絡をするもいろんな理由をつけて会えず、滞在最終日の空港で、嫌な予感がしてネットで検索すると、『トランプ詐欺』という典型的な詐欺だとわかりました。一文無しのホームレス状態になることが確定し、途方にくれたときに、助けてくれたのがバジャウ族でした。翌月のバイト代が入るまでの1か月間、居候生活させてもらったんです。このとき、バジャウ族のためにできることがしたいと強く思いました」
都市開発や環境汚染の影響で漁ができなくなってしまった
助けてくれたバジャウ族に恩返しを誓う
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