清野とおる×パリッコが語る、飲み歩いて気づいたこと「どこの街にも、キーマンはいる」
街に活気が戻ってきた今こそ、“街飲力(まちのみりょく)”を身につけるべし。漫画家・清野とおる氏×酒場ライター・パリッコ氏による書籍『赤羽以外の「色んな街」を歩いてみた』は、知らない街で知らない店を楽しむ極意が詰まった一冊。街飲み特有の喜怒哀楽をエッセイと漫画で追体験でき、読後はまさに飲み会後のようなほろ酔い気分と満足感に浸る“酔える本”だ。
ーー赤羽の「赤」以外の色がつく知らない街を飲み歩くというのが連載のテーマでした。このほかにテーマ案はあったのでしょうか?
パリッコ:すんなりこれで決まりましたね。もとは『酒場人』という雑誌で、清野さんと二人、赤羽でよく飲んでいて、一緒に企画をやりたくて始めました。飲み歩くという内容は決まっていたことなので、どんなふうにしようかと。
清野とおる(以下、清野):単純に、パリッコさんと赤羽以外のお互い馴染みのない街をいろいろ攻略しに行きたいなということになりまして。赤羽でないところで、赤羽が「赤」だからそれ以外の色がつく街という最低限の縛りだけ設けることになりました。
清野:パリッコさんとは、お互いまだそんなに仕事がなかった時代から飲んでいて、その頃から頻繁に珍事に遭遇したんですよね。たとえば赤羽で飲み歩いていたら、住宅街のありふれた古アパートの2階の窓から淫靡な光が漏れてて。
光の中から女の人と思われるセクシーな脚が僕らを、脚招きをするように現れて、「清野さん、あれ見てください! 『トゥトゥットゥトゥルルルットゥトゥ~』(「伊勢佐木町ブルース」のメロディ)だよ!」ってパリッコさんが叫んだ(笑)。それでその脚と目が合ったような感覚を覚えた瞬間、脚のほうもバツが悪そうに室内にスススス~っと消えていったんです。あれは本体のない、脚だけの生き物だったんじゃないかな。
パリッコさんがいると、そんなことが一夜のうちに4つ、5つぐらい続いて、毎回おなかいっぱいになって帰る、みたいな。パリッコさんに街を喜ばせる何かがあるんじゃないかと思って、他の街でも試してみたかったというのもありますね。
パリッコ:清野さんはクセのあるお店の人にもスッと受け入れられる能力があるんですよ。以前も、北池袋に、いくらなんでも怪しすぎるプレハブみたいな居酒屋があって、清野さんが扉を開けたら「どうぞ」と招き入れられたあとに女将さんが「うちは、普通はいちげんさんを入れないのよ」って。
清野:女将さんによる人心掌握の手口かも知れませんけどね(笑)。
「赤以外の色がつく街」は最低限の縛り
なんてことないアパートから淫靡な光が
『赤羽以外の「色んな街」を歩いてみた』 「赤」以外の色の名前がつく駅や街で、ただただ飲み歩くだけ |
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