ニュース

「安倍元総理と旧統一教会のつながり」は常識。犯行の正当化ではない/古谷経衡

社会への影響は遺憾ながら始まったばかり

ーー今回の事件が起きてしまったことで、今後の社会に与える悪影響で危惧されることについて教えてください。 古谷:選挙中の要人演説、候補者演説などで過度な警備を要することが予想され、結果として選挙活動が委縮してしまうこと。また総理経験者の射殺は戦後初めてであり、よって余りにも衝撃が大きく、巨大な影響がメディア、有権者の感情、警察の警備体制問題など長期に及ぶことが予想され、その影響は遺憾ながら始まったばかりではないかと思われます。  初公判以降、刑が確定するまでは年単位の時間がかかることが予想され、1~2年程度でこの事件のあらゆる悪影響(一般有権者の心理的状況も含め)が軽減するとは思えません。

事件を受けて個々に求められること

ーー今回の事件の影響の大きさから、議論が過熱するあまり暴走していると感じるフシもあります。 古谷:暴力、銃撃事件を許さないことと、特に第二次安倍政権への評価と、安倍元総理と旧統一教会の関係性を分析することは、すべて並立することです。とりわけ安倍元総理と旧統一教会の関係性を分析することが犯人側の理屈に正当性を与える、などという言説がありますが間違いです。銃撃を許さず安倍元総理の御霊を追悼することと、安倍元総理と旧統一教会の関係性を分析することはまったく別個の問題であり、また第二次安倍政権の功罪を評価することもまったく別問題です。  ただし、前述したように、旧統一教会、国際勝共連合の影響力はとりわけ21世紀に入って減退傾向であり、旧統一教会の信徒数も数万~多くて10万人程度とされています。自民党清和会を支援する宗教団体としては「中堅規模」であることは認識するべきです。また宗教右派というのは基本的に復古的価値観・家父長制的価値観を唱えており、第二次安倍政権がそれに影響されたというよりも、彼らが皆同じような方向を向いていたというのが正しいかと思われます。  旧統一教会と自民党清和会の関係性はすでに述べた通り既知のことで、「関係がない」というのは無理な話です。一方で「政権の隅々にまで入り込んでいたズブズブの関係」というほど濃い関係だったのかどうかまでは留保が必要です。言わずもがな、政権に最も影響を与えている宗教団体は旧統一教会ではなく信徒数200万~300万人ともいわれる創価学会です。旧統一教会と自民党清和会、安倍元総理との関係性は「あった」訳ですが、その濃淡については広く議論することが求められます。それとは別に、宗教二世の問題や、旧統一教会による金銭等の被害者の救済は、これもまた別問題として追及していかなければなりません。
(ふるやつねひら)1982年生まれ。作家/評論家/令和政治社会問題研究所所長。日本ペンクラブ正会員。立命館大学文学部史学科卒。20代後半からネトウヨ陣営の気鋭の論客として執筆活動を展開したが、やがて保守論壇のムラ体質や年功序列に愛想を尽かし、現在は距離を置いている。『愛国商売』(小学館)、『左翼も右翼もウソばかり』(新潮社)、『ネット右翼の終わり ヘイトスピーチはなぜ無くならないのか』(晶文社)など、著書多数
1
2
おすすめ記事
ハッシュタグ