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トンチンカンな野党と、無限大にヌルくなる与党/倉山満

総選挙で勝っても党首が総理大臣になれなかった維新

 それに対し、野党第二党の日本維新の会が結党以来初の代表選挙を行う。前途には嵐が待ち受けているが、こちらは厳しい批判の目を向けつつ見守りたい。
維新 代表選挙

画像/「日本維新の会」公式HPより

 日本維新の会の構造は独特だ。今まで代表は、創業者の橋下徹、ついで松井一郎といった首長が務めてきた。我が国は議院内閣制で、政権を獲って総理大臣になる政党の党首は国会議員でなければならない。つまり、日本維新の会が何かの拍子で多数派になっても「松井首相」はありえなかった。  維新には色々と不思議な制度があるのだが、すべてこの党の歴史的経緯に由来する。日本維新の会は、大阪の地方議員が大阪の改革を掲げて発足させた。この党の理念は、「大阪の改革を全国へ」だ。だから、普通の党のように、国会議員が中心で、地方議員がピラミッド型に組織を形成している形の党ではない。むしろ、大阪の地方議員が主導し、国会議員が大阪の改革を国政で主張するような構造だ。それが如実に表れているのが党大会のような重要な投票で、普通の政党は国会議員が一人一票に対し地方の代表は県連で一~数票だ。これに対し維新は、国会議員も地方議員も一票だ。この対等の一票制により、維新では大阪府議市議が最大多数派となる。党大会を開くか開かないかも、大阪の府議市議の意向で決まってきた。

地方議員も国会議員も二千円の党費を払った党員も同じ一票

 これも、多くの党と離合集散を重ねる中で、党を乗っ取られないように規約を変え続け、今のような形になったのだ。今回、松井代表の辞意により、初めて代表選挙を行う。この代表選挙も独特だ。地方議員も国会議員も同じ一票だが、二千円の党費を払った党員も同じ一票だ。だから、党員の比重が異様に高い。  仔細な点では異なるが、この制度はかつての新進党を思い出す。この党は、非自民・非共産を掲げ、一時は細川羽田連立内閣を形成した政党が結集して成立した。その党首選に当たり、「開かれた党」を謳い、「国会議員もコンビニで党費を払った党員も同じ一票」という党首選を導入した。さすがに維新では「コンビニで払って党員になった人も国会議員と同じ一票」はやっていないが、党員の比重が高いのは同じだ。  新進党は党改革を進める前に党そのものが崩壊したが、日本維新の会は他山の石とすべきだろう。
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「3年で岸田首相に代わる、魅力ある党首を国民にアピール」ならば、できなくはない
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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