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トンチンカンな野党と、無限大にヌルくなる与党/倉山満

岸田首相の権力維持に向けた見事な派閥均衡人事

 政権は衆議院を解散すれば強くなり、内閣を改造すれば弱くなる。この一般論から逃れられる総理大臣は少ないが、岸田首相も御多分に漏れなかったようだ。案の定、支持率は低下した。  一説には、旧統一教会隠しが狙いだったとも、それよりももっと大がかりな汚職隠しが狙いだったとも言われるが、よくわからない。  とにもかくにも、図表の通り。見事なばかりの派閥均衡人事だ。 言論ストロングスタイル 岸田首相の権力維持に向けた戦略は明確だ。まず自派を固める。次に第二派閥の茂木派と組む。この両派は岸田内閣を支えるモチベーションがある。総裁派閥の岸田派は言うに及ばず、第二派閥で党を預かる茂木敏充幹事長は、岸田内閣を支えれば次は自分が総理大臣だ。第三派閥の麻生派は何でもいいから主流派にいれればいい。この三派が組めば、党内に敵なし。派閥議員が100人に迫る旧安倍派をそれなりに満足させれば、怖いものなし。

厚労大臣として失敗を繰り返した加藤勝信の三度目の就任

 この四派に加え、総裁選で岸田首相を推した旧谷垣グループに役職の一つも与えておけば論功行賞になる。衆議院は定数是正の為に調整が必要だが、そんな面倒な仕事の選挙対策委員長は非主流派に体よく投げ与えておけばいい。  非主流派でも二階派はそれなりに数がいるので、どうでも良い大臣をくれてやるが、あとの菅グループや石破グループは物の数ではないので、派閥と認めない扱いのゼロ。  それにしても、この人がこのポストで大丈夫かと言いたい人事もある。別に厚労大臣として失敗を繰り返した加藤勝信の三度目の就任を言っていない。コロナ対策が、地獄絵図の再来とならないよう祈るしかない。

頓珍漢な野党と無限大にヌルくなる与党

 岸田首相は何がなんでも政権を長く続けたいのだろう。それで続くなら、批判勢力が弱すぎる、ということなのだが。  自民党が如何にヌルい政策しかやらなくても、野党第一党が頓珍漢な批判しかしなければ、政権は安泰だ。ヌルい与党と頓珍漢な野党なら、国民は与党にどんなに不満でも、与党を選ぶしかなくなる。そして与党のやることは無限大にヌルくなる。  だから野党第一党が大事なのだが、立憲民主党は今ごろ参議院選挙敗北の総括で執行部入れ替えとか。それこそ生暖かく見守ろう。見事なまでのマイノリティー向けの頓珍漢な主張を繰り返しているが、今後伸びる要素が無い。マイノリティーの代表が生存するのは構わないが、野党第一党に居座るのは不当だろう。もっとも、この党にはもはや分裂するエネルギーも残っていないようだが。
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総選挙で勝利しても党首が総理大臣になれなかった維新
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