恋愛・結婚

女子大生とイイ関係になれた、とあるおっさんの恋物語

ossan2-2【おっさんは二度死ぬ 2ndシーズン】

恋は遠い日の花火

 立川の場外馬券場WINSには様々なおっさんがいる。そこに集まるおっさんたちはもちろん馬券の購入が目的なのだけど、一概にはそうとも言えない側面もある。  現に、新型コロナの流行がピークを迎えた頃、各地のWINSは馬券購入のみという形で営業していた。モニタはすべて電源を落とされ、馬券記入以外でフロアに留まることもできなかった。ただ馬券を買ってそそくさと帰る。そんなスタイルだった。そうなったときに知り合いのおっさんの多くはWINSに足を運ばなかった。あれだけ競馬に狂っていた面々が、こぞってWINSに行かなかったのだ。  彼らはこのWINSにおっさんだけで集まって、とりとめのない無駄話に興じることこそが主目的なのだ。馬券なんてものは二の次で、馬券をダシにああでもないこうでもない福永金返せと言いたいだけなのだ。  WINSの規制も緩和され、観戦モニタにも光が戻りつつあり、おっさんどもも次第に集まるようになった。誘蛾灯に吸い寄せられる蛾のようだ。すると自然消滅したかと思われたおっさんコミュニティも自然に息を吹き返し始めたのだ。  そんな、おっさんコミュニティがこの立川のWINSにもいくつかあり、そのうちの何個かに僕も所属している。今日は、そのコミュニティで起こった事件についてお話ししよう。  その日、立川WINSに行くと、やはりいつものように知り合いのおっさんコミュニティがお決まりの場所に陣取っていた。だいたいなんとなく同じ場所に集まっているから見つけることは簡単だ。大学の非公式サークルがサークル部屋などの特定の集合場所を持たない時に、この自販機前の藤棚のところ、となんとなく集まる場所が決まっているイメージに近い。 「こんちは!」  元気に声をかける。すぐにチラホラと返事が返ってきた。 「はあ……」  その中で一人、皆から田上さんと呼ばれているおっさんが、深いため息で挨拶を返した。 「田上ちゃんね、いま、めっちゃ面倒な状態になってるんだわ」

恋したおっさんは面倒くさい

 他のおっさんがそう耳打ちしてくる。当の田上さんは、どうしたんですかと聞いてくれと言わんばかりの目線をこちらに投げつけてくる。 「はあ……」  そして深いため息をつく。うわー、めちゃくちゃ面倒くさい状態だ。  ただ、もう僕は完全にロックオンされているので聞かないわけにはいかない。 「田上さん、どうしたんですか。そんなにため息をついて」  僕の言葉に、田上さんはジッと爬虫類のような視線を向け、もう一度、深いため息をついた。めちゃくちゃめんどくせー。 「恋ってさ、遠い日の花火じゃないよな」  そして、しっかりとためを作った後に、いきなりウィスキーのCMみたいなことを言いだした。死ぬほどめんどくせー。 「田上ちゃんさ、いま恋してんのよ」  遠くを見つめてお話にならない田上さんに代わって別のおっさんが解説してくれた。なるほど、恋をしているからこういう面倒くさい状態になっているのか。
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おっさんが女子大生とまさかの……
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