恋愛・結婚

女子大生とイイ関係になれた、とあるおっさんの恋物語

女子大生と一丁前に恋の駆け引きをする田上

 ブルルル  田上さんが手に持っていたスマホが振動する。画面を一瞥して田上さんがまた深いため息をつく。 「まいったなあ、その女子大生からLINEだよ」  すぐにおっさんどもが色めき立ち、見せろ見せろと押し寄せることになった。 「この間は楽しかったねー、また行こうね」  みたいなことが書かれていた。 「アイコンもめちゃくちゃかわいい。なんでこんなことが許されるんだ」  もう川口さんは唇を噛みしめすぎて血が出そうになっている。 「返事しないんすか」  僕の問いかけに田上さんが悠然と答える。 「返事はすぐにしちゃダメって言うじゃん」  なにYUIのCHE.R.RYみたいなこと言ってんだ。なに恋の駆け引きをしてんだ。 「まいったなあ、ちょっと時間をおいてお前らで返しておいてくれよ。そうだねーまた行こうねって」

「もう俺は競馬とか夢中になれんわ」

 田上さんは勝者の余裕みたいな表情を見せた。そのまま川口さんが田上さんのスマホを握ったままだと女子大生に何を送るかわかったものじゃない。けつあな確定とか送りかねない。なので、ひとまず僕が手に持ち、なぜか言われるままに女子大生に返事を送った。 「そうだねーまた行こうねっ、っと。送りました」  送ったメッセージにはすぐに既読がつき、すぐに返事が返ってくる。向こうはYUIの教えを守っていないらしい。 「いつにする?」  女子大生、めちゃくちゃ積極的だ。 「いつでもいいよって返しておいてくれ」  自分で送れよと思いつつ、なぜか代わりに送る。すぐに既読がついて返事が来た。 「今度の日曜日とかどう?」  めちゃくちゃ積極的だ。女子大生の方が田上さんに食いつき気味だ。とんでもないことが起こっている、そう思った。 「日曜かあ、GIがあるんだけどなあ、俺はもう競馬には夢中になれんわ。阪神2000がどうとか議論できんわ。だから日曜はデートにするかあ。OKって返しておいてくれ」  あまりの悔しさに川口さんはシクシク泣いている。川口さんは「阪神2000がいちばん面白いレース」論者なので、女子大生のことばかりか、大好きな阪神2000をバカにされたことが悔しかったらしい。
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そして案の定の展開が
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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