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おっさんの安らぎの場所、田迎サウナの魅力に包まれて

【おっさんは二度死ぬ 2nd season】

熊本のおっさん楽園-田迎サウナ-

 おっさんは迫害されすぎなのである。  臭い、キモい、汚い、みたいに迫害されること風の如し、職場では存在自体がセクハラと陰口叩かれること林の如し、家庭にも居場所がなくて洗濯物を別に洗われること火の如し、なにを言われても動かざること山の如し、といった迫害の風林火山を形成している。  そりゃ、おっさんにも悪い部分もあるし、反省する部分も多々あるとは思うけど、いくらなんでも迫害されすぎなんじゃないだろうか。  そんな、居場所がなく、安らげる場所のないおっさんに向けて、せめて安らげる場所を紹介しようという“おっさん憩いの場所”シリーズの2回目だ。  シリーズ1回目では、神奈川県厚木市にある東名厚木健康センターの魅力をあますことなく紹介した。  おっさんだけが知る厚木の本当の魅力。本厚木駅前のダブルファミマは異世界への扉  シリーズ2回目では関東を飛び出し、はるか遠き九州にあるおっさん憩いのサウナを紹介したい。  熊本県熊本市。熊本駅前の再開発により街並みは一変した。そんな熊本駅前からはやや行きにくい場所にそのサウナは存在する。車通りの多い幹線通りから脇にそれ、住宅街を突き抜ける。そこまで大きな道路ではないのに交通量は多い。ややワインディングしたその路地を走っていくと、左側に年季の入ったビルが見える。これが田迎サウナだ。

雑居ビルみたいなところにある喫茶店の入り口みたいな店構えの田迎サウナ

 駅からも遠く、熊本市の主要交通機関である路面電車からも大きく外れた場所に存在し、交通アクセスは良いとは言えない。まさに地元の人のためにあるサウナといえるだろう。よそものがここに到達しようと思ったら、バスの乗り継ぎかタクシーかレンタカーとなる。かなり難易度が高い。  かくいう僕も、友人である銭湯好きおっさんの勧めがなければ来なかったであろう場所だ。おっさん4人組が連れ立って混浴や温泉やサウナを巡るおっさん旅、その総仕上げとばかりに銭湯好きおっさんは口にした。 「田迎サウナっていいサウナがあるんですよ」 「よし、そこいこう」  こうして、おっさん4人組はレンタカーを走らせて田迎サウナへと向かったのだ。  第一印象はただのビルだった。とてもここに入浴施設があるとは思えない雑居ビルみたいな建物が建っていた。ただ、その脇にある駐車スペースにはオレンジ色の文字で「サウナ」と書かれているので、やはりここがサウナなのだろう。  本当にこの先にサウナがあるんだろうかという細い階段を登る。重厚なアズキ色のタイルが張られた階段、喫茶店の入口みたいな雰囲気だがデカデカと「田迎サウナ」と書かれているので、やはりここにサウナがあるらしい。 「ここは店員がいない無人のサウナなんです」  銭湯好きおっさんのテンションも高い。
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水槽にぶらさがっている謎の500円玉群
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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