恋愛・結婚

女子大生とイイ関係になれた、とあるおっさんの恋物語

おっさんが女子大生とまさかの……

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※写真の人物と記事の内容は関係ありません

 田上さんは続ける。 「いいよな、お前らは競馬みたいなくだらないことに夢中で。福永がどうしたとか、前残り馬場とか、ビュイックとか、くだらんよ。それに引き換え恋の難しいこと難しいこと。それに比べたら競馬なんてくだらんよ」  コイツぶん殴ってやろうかなと思ったけど、さすがにそれは別のおっさんに止められた。 「それもね、田上ちゃん、女子大生と恋してんのよ」  また、おっさんの解説が入る。 「じょじょじょじょ、女子大生!?」  一同がざわめいた。この田上さんが女子大生と恋? そんなことが許されていいいのだろうか。そんなことが起こったらいろいろな世界の法則みたいなものが崩壊するんじゃないだろうか。みんなけっこう酷いことを言いまくっていた。  言うまでもなく、おっさんにとって女子大生は最も遠い存在だ。陰と陽、明と暗、天国と地獄、地球の裏側、まったく正反対で決して交わることのない間柄だ。それなのに田上さんはその正反対の存在に恋しているというのだ。 「それって田上さんが一方的に恋していて、その、ストーカー一歩手前とか、接近禁止命令とか、そういう状態なんですよね。それを恋と呼んでいるんですよね」  誰かがかなりの早口で確認した。それでも田上さんは余裕の表情を崩さない。その横にいたおっさんが代わりに説明する。 「それが、この間、デートしたらしい」 「えええええええええ」

そんなことが許されて良いはずがない

 WINS立川が揺れた。いや、正確にはWINS立川の俺たちおっさんが集まっている階段周辺のところが揺れた。 「そんなこと許されていいのかよ。田上ちゃんと女子大生がデートなんて。許されていいのかよ」  なぜか全然関係ない川口さんがめちゃくちゃ怒り始めた。小柄で普段は大人しい川口さんが、本気で怒り始めた。それを悠然と見つめる田上さん、そこでまた深くため息をついたのち、口を開いた。 「いいよな、お前らの悩みは競馬だけだもん。サリオスは天皇賞・秋に行くべきだろみたいなことギャーギャー言い合ってるんだろ。俺はもうそういうの卒業しちゃったな」  コイツ、本気でぶん殴ってやろうか。 「どこだよ、どこにデートに行ったんだよ」  川口さんはもう涙目だ。なにが彼をここまで駆り立てるのか。女子大生の魔力か。 「まず駅で待ち合わせしたよ。それからショッピング行って飯食ったかな」 「くぅーーーー」  川口さんは目から大粒の涙を流している。なんでそこまで怒れるのか。ちょっと怖くなってきた。 「それからどうしたんだよ。飯食ったあとだよ」  もはや川口さんがチンピラみたいになっている。 「そりゃラブホよ」 「ぎゃーーーーーーー!」  あまりに川口さんが大声で叫ぶものだから、他のおっさんどもの注目を集めてしまった。とにかく、田上さんが女子大生とデートし、ラブホまで行った、それは歴然たる事実のようだった。
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女子大生と一丁前に恋の駆け引きをする田上
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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