恋愛・結婚

女子大生とイイ関係になれた、とあるおっさんの恋物語

そして案の定の展開が

「やったー、楽しみ。前みたいに13時くらいでいい?」  かわいらしいスタンプと共に女子大生からの返事が返ってくる。田上さんは女子大生と恋をしているのだ。そしてデートもし、ラブホにも行っている。歴然たる事実がそこにあった。もう川口さんは息をしていない。しかし、追撃のように送られてきた女子大生からのメッセージで状況は一変する。 「じゃあ13時からで店に連絡しておくね。姫予約で」  店に連絡? 姫予約?  解説しよう。姫予約とは、風俗店などにおいて店に直接連絡して女のコを予約するのではなく、女のコと直接にやりとりをしてダイレクトに予約、その後、女のコが店に連絡するというスタイルだ。 「これ、風俗店のコなんじゃないですか? 予約とかお店とか言ってるし」  川口さんが息を吹き返した。  川口さんは僕の手から田上さんのスマホを奪い取ると、女子大生とのトーク履歴を遡りはじめた。 「やっぱり風俗店だ。それのデートコースじゃねえか」  解説しよう。デートコースとは、本来、デリヘルなどのサービスはラブホテルに女のコが派遣され、性的サービスという流れになる。60分から90分くらいのサービス時間がボリュームゾーンだ。そのワンランク上のサービスとして「デートコース」なるシステムを採用している店もいくつかある。  いきなりラブホではなんとも風俗店っぽい。もっと恋人同士みたいな感覚を味わいたい。そんな需要があるようだ。そこで、180分から300分くらいの長い時間をとり、もちろんそれだけ値段が跳ね上がるのだけど、普通の恋人同士のように待ち合わせしてデートして、最後はラブホに入ってデリヘルサービス、という 「お店のホームページ見たら300分9万円のデートコースじゃないですか。なにやってんですか、田上さん!」

そう、これは恋じゃなくても恋なのだ

 川口さんが声を荒げる。 「今はそうだけどさあ、これはもう恋なんだよ。いまはそういうデートコースという形態をとってるけどさ」 「完全にお店のサービスじゃないですか! 恋じゃないですよ!」 「恋だ」 「恋じゃない」  激しく罵りあう田上さんと川口さん、。それを眺めていた全員が「ぜったいに恋じゃねえよ」と考えていた。  恋は遠い日の花火なんかじゃない。その言葉は美しく聞こえる。思い出のように思い出される花火は美しい。けれどもすぐに夜空へと消え入る儚さも持ち合わせている。でも、恋はそんな思い出の中だけのものではなく、例えおっさんになっても咲き誇るものなのだ。ということが言いたいのだろう。けれども、それは一歩間違えると田上さんのように、9万円払ってプレイするデートコースを恋の花火と勘違いしてしまうのだ。 「恋は遠い日の花火でいいんじゃないかな、少なくともおっさんにとっては」  そう呟いた川口さんの言葉が忘れられない。  結局、田上さんと川口さんの口論は終わりが見えず、最終的にはデートコース抜きでデートしてもらえるか確かめることとなった。日曜日までにそれとなく切り出し、デートコースはダメになったけど大丈夫かなと切り出すらしい。その結果が水曜日にも判明するとのことだった。  水曜日。  川口さんから連絡が来た。田上さんから結果の報告があったらしい。 「阪神2000って楽しいレースだよな!一緒に秋華賞(GI)頑張ろうな!」  どうやら、お店の外でのデートは断られ、日曜日は競馬に来るらしい。そりゃそうだ。  恋は遠い日の花火であった。それでもおっさんたちはWINSで秋の華火ともいえる秋華賞(GI)を楽しむのである。 <ロゴ/薊>
テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――

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