更新日:2022年11月16日 19:14
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「難民と認めてほしい」軍政の弾圧から逃れてきたミャンマー少数民族の願い

どこでもいいから、ミャンマーから出たかった

10月16日に行われたミャンマー人たちのデモ。先頭で声を上げるミョーさん。ミャンマーでは、軍に学校を空爆されて子供たちが殺された。

10月16日に行われたミャンマー人たちのデモ。先頭で声を上げるミョーさん。ミャンマーでは、軍に学校を空爆されて子供たちが殺された。

 ミョーさんはミャンマーで5~6回ほど逮捕され、留置場に何度も入れられた。そして彼の父親は、ミョーさんを解放したければ賄賂を払うようにと、捕まるたびに要求された。逮捕されていない時でさえ、家に来て「お前の子供を逮捕するぞ」と親を脅し、賄賂を脅し取り続けた。それが軍事政権のやりかただった。  最後に捕まったのは、町の喫茶店で仲間と集まっていた時のこと。特殊部隊と警察が銃を持って店に入ってきて「頭を地面につけろ!!」と怒鳴った。メンバーは全員連行され、インセイン刑務所に入れられた。みな裸にされて殴る蹴るの拷問をされた。「誰の指示か? なぜこういうことをやっている? 親は注意しないのか? ダメなことだとわかっているのか?」と聞いてきて、何も答えなければひたすら殴り続けた。 「私は刑務所の中で考えていた。自分が間違ってはいないのはわかる。ただ家族が、自分のせいでいつまでも脅される。お父さんが頑張って苦労して稼いだお金が、全部賄賂でなくなってしまう。自分がいる限り、ずっとたいへんな生活をおくらなければならない。自分がいなければ賄賂を要求される心配はない。どこでもいいから、この国から出て行こうと考えていた」  出所の際、父親が迎えにきて車中でこう話した。 「あなたのやっていることは間違っていない。でもあなたを失いたくないし、弟も勉強に励めないし、お母さんはいつも泣いている。自分は心臓が悪く高血圧で、このままでは倒れてしまう」  話し合いの末、父親がブローカーに頼んでパスポートとビザを作ってくれた。ただでさえ借金をしているのに、さらにお金がかかるので申し訳なかったが、父親は「あなたが心配することではない」と言った。刑務所からは家に帰らず友人宅にかくまってもらい、「パスポートとビザができ上がったらその日に空港へ行こう」とブローカーに言われた。

難民申請が認められず、二度の収容

 そして2006年に来日。その1週間後に品川入管で難民申請をした。日本にはヤンゴンでお世話になった親戚がいた。民主化運動で戦い、日本に避難して今は在留特別許可を持っている。  ミョーさんは来日以来、ずっと3か月のビザを更新することができていた。ところが2012年1月に難民申請が却下されて入管収容施設に1年間収容された。そして2013年から今まで、ずっと「仮放免」の扱いでビザがない状態だ。2019年12月に、再び難民と認められずに2回目の収容となった。  その後、2021年4月に解放された。2月にミャンマーで軍部によるクーデターがあったから出ることができたのだ。それがなければ出られなかった。周りから「3年は出られない人が多くなっている」と言われ、長期収容を覚悟していたところだった。  最近はメディアなどに露出することも増えてきたが、もう怖くないという。 「1回目に収容された時は怖かった。その時は知り合いもいなかったし、自分を取材する人もいなかった。2回目は面会に支援者やメディアが来るようになった。  その人たちから、自分のように難民だと認められない人たちがニュースに出ているし、戦っている人がたくさんじゃないけどいるということを聞いて、『自分もメディアに出る』と決心した。そうしないと、この問題に誰も気づいてもらえないと思ったから。  何も悪くない、ただ日本に残りたい、難民申請したい人がなぜこんな目にあわないといけないのか訴えたいと思った。  入管職員のやっていることは嫌だけど、仕事だから仕方ないとは思っている。収容中は、あまり入管と喧嘩することはなかった。他の人をイジメた職員を注意することはあった。大勢で抗議する時は一緒に抗議した。1人でやると自分だけが悪者にされて、たいへん不利になってしまう。  もう自分には帰る場所がない。ミャンマーでは2017年、軍によるロヒンギャの大虐殺が起きて、家族がバングラデシュに避難した。ミャンマーにはもう何もない」
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日本人は優しいのに、入管だけは優しくない
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おだあさひ●Twitter ID:@freeasahi。外国人支援団体「編む夢企画」主宰。著書に『となりの難民――日本が認めない99%の人たちのSOS』(旬報社)、入管収容所の実態をマンガで描いた『ある日の入管』(扶桑社)

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