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サッカー日本代表・森保一監督「クルクル変わる表情の秘密」を分析した

森保監督の表情にみる純粋さ

森保一

写真/日本雑誌協会

 感情の流れに身を任せたままだと、驚きと幸福が止めどなく溢れてしまい、インタビューにならないため、あるいは、適切な勝者のふるまいを意識してか、監督は、ときに眉間にしわを寄せ、熟考し、幾度となく唇に力を込め、感情を抑制しようとしていたのだと思います。  それでも、突出して驚き表情が多い(画像の緑色のグラフが驚きを意味しています)。これは、「聞いて、聞いて!見て、見て!凄いでしょ!!」と言わんばかりに、少年のように無邪気に、感動し、感情豊かにサッカーを楽しんでいたからだと思われます。  次に会見での監督をみてみましょう。クロアチア戦で負けてしまい、日本に帰国した直後の会見です。目標としていた「新しい景色」に到達できなかったという状況ですので、先のインタビューのようにテンションは高くなく、表情もクルクルと変化しませんが、それでも感情の彩りを垣間見ることが出来ます。  先のインタビューとこの会見をみていて気づいたのですが、監督は、眉をハノ字にして考えたり、発言を強調したり、感謝を伝えるクセを持っていると考えられます。ハノ字眉がよく生じるのです。通常、眉がハノ字になるのは、悲しみ感情があるときです。悲しみ感情は、眉をハノ字にし、口角を引き下げ、下唇を引き上げる表情として表れます。

監督のチャーミングさは、眉のクセが原因か?

 多くの方が、表情豊かな監督をチャーミングだと思われていると推察されますが、この所以は、表情の豊かさだけでなく、ハノ字眉にもあると考えられます。というのも、私たちは、ハノ字眉をみると、その表情を浮かべる人に助けの手を差し伸べたくなる、あるいは、愛情を向けたくなる傾向にあることがわかっています。悲しんでいる可能性のある人に関心を向けるのです。人だけでなく、動物にも適用され、例えば、この表情をする保護犬は、新しい飼い主が早くみつかるという調査結果もあります。  監督の悲しみは、口に生じるようです。「ベスト16の壁をやぶることが出来ませんでしたが…」と発言する場面で、口角き引き下げ、下唇が引き上げ、唇に力を込め、悲しさと悔しさをみせていました。  また、この会見で特徴的だったのは、侍ブルーの解散にあたり、選手やスタッフに伝えたことをインタビューワーに返答している場面です。 「個の強さはもちろんですけど、チームの団結力、そして一体感、つながる力というのは日本の良さだと思うので、そこは個の強さで忘れないように持ち続づけて欲しい、ということは伝えました」と発言しつつ、幸福と得意気な気持ちが混合する表情をしています。顔をくしゃくしゃにし、目じりを下げ、満面の笑みを浮かべつつ、片方の口角をクイっと引き上げる、そんな表情です。  世界に挑むために、個々の技術レベルの向上は当然ながら、技に溺れてはいけないことを警告するとともに、監督自身誇りに感じる日本の良さを、今後も継続して欲しい、そんな熱い思いが伝わって来ました。  ハノ字に眉を動かすクセに加え、クルクル表情が変わる森保一監督。平生は、落ち着き、穏やかな印象を受けますが、ことサッカーとなると、表情が豊かになり、豊かゆえに監督のエネルギーがダイレクトに相手に伝わり、相手の心を振動させ、元気・勇気・気づきをもたらす、そんな人柄に、選手だけでなく、私たちは魅了されるのではないでしょうか。 <文/清水建二>
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役、防衛省研修講師、特定非営利活動法人日本交渉協会特別顧問。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。著書に『裏切り者は顔に出る-上司、顧客、家族のホンネは「表情」から読み解ける』中央公論新社、『ビジネスに効く 表情のつくり方』イースト・プレス、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』フォレスト出版、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』飛鳥新社などがある。
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※本分析は、株式会社シーエーシーによって開発された心sensorを用いて分析しました。
心sensorとは、動画に映る人物の表情を分析し、感情を推測するためのアプリケーションです。
詳しくは、https://www.affectiva.jp/kokorosensorを参照して下さい。
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