ニュース

皇室を皇室たらしめる「越えてはならない一線」/倉山満

皇室の伝統とは皇位の男系継承である

 だからと言って、歴代天皇の全員が人格者で能力に優れているから、天皇を守るにふさわしい訳でもない。その逆の天皇も何人もいた。  一時は、「天皇」号の伝統すら失われた。平安後期から中世・近世の天皇は「〇〇院」と呼ばれていた。「白河院」「鳥羽院」のように。天皇号を復活させたのは、江戸後期の第119代光格天皇である。「天皇」の名前すら絶対ではない。そもそも、古代の天皇が「〇〇天皇」と呼ばれていたはずがない。 言論ストロングスタイル 変わらず続いている伝統こそ、皇室の本質である。では、一度の例外が無く続いている伝統とは何か。皇位の男系継承である。

皇位の男系継承とは、一般人の男を皇族にしないこと

「男系継承など、そんな言葉があったのか」という批判もあるが、ならば「女系」などという言葉もない。「女系天皇」「女系容認」という言葉が出て、仮に皇室の伝統を示す言葉として「男系」という言葉が出てきただけである。  皇位の男系継承とは、一般人の男を皇族にしないことである。歴代天皇は父親の父親……をたどれば、必ず神武天皇に至る。皇族は神様の子孫なのだ。  ちなみにその神武天皇の祖母である皇祖神アマテラスは女性ではないかと言う人があり、女系継承が日本の伝統だとする論に使われる。しかし、神話によれば神武天皇の父はアメノオシホミミ、祖父はスサノオ。男系継承されている。アマテラスとスサノオは姉弟婚で、父母はイザナギとイザナミ。そもそも、神話を理由に人間界で続いてきた伝統を変えるのもいかがな姿勢かと思うが。

皇室の尊さを語るのに「Y」も「染色体」も「遺伝子」も不要だ

 一般人を皇室に入れない伝統を守るべしとする男系継承論者にも、先例を乗り越えて女系継承容認に踏み込むべきだとする女系論者、双方に愚か者も利口もいる。  私は男系継承論者だが、「三種の神器が大事なので天皇個人はないがしろにして良い」「天皇など黙って祈っていろ」と暴言を吐く人々には辟易している。頭を抱えるのは、「歴代天皇は神武天皇のY染色体遺伝子を受け継いでいるから尊いのだ」などと言い出す人々だ。女帝にY染色体遺伝子があるのか。皇室の尊さを語るのに「Y」も「染色体」も「遺伝子」も不要だ。  私は、皇室の尊さは、ご存在そのものだと考える。絶対子供が生まれる技術がある訳でもないのに、その時代ごとに皇室を守りたい人々の意思が勝ち、続いてきた。そうした中で、幾多の風雪に耐えて、変わらぬ姿を続けてきた。
次のページ
弓削道鏡、足利義満……あらゆる権力者が乗り越えられなかった掟が、皇位の男系継承だ
1
2
3
おすすめ記事