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皇室を皇室たらしめる「越えてはならない一線」/倉山満

あらゆる権力者が乗り越えられなかった皇室の掟

 皇室における掟は先例である。先例の積み重ねが伝統である。あらゆる権力者が乗り越えられなかった掟が、皇位の男系継承だ。どの先例に従うかを議論すべきだ。  皇室の長い歴史において、皇室に入り込もうとした一般人が二人いる。  一人は、奈良時代の弓削道鏡。第48代称徳天皇に取り入り、宇佐八幡宮から「次の天皇は道鏡にせよ」との神託を得る。しかし和気清麻呂が神託を改めて確認すると「我が国は君臣の別がある」との正しいお告げが下った。単純な手口は、あっさり破られた。

30年かけて近づいていった足利義満でさえも……

 もう一人は、室町幕府三代将軍足利義満。義満は皇室の先例を熟知し、徹底的に隙を突いた。皇室における先例は杓子定規に再現するのではなく、大枠を守りつつ「准じる」形で時代に合わせていく。義満も大枠では先例を守りつつ、徐々に皇室に入り込むべく30年かけて近づいていった。自らが法皇のように振舞い、妻を准母に立て、息子を親王の儀式で元服させ、あと一方で息子を天皇の位に就ける寸前まで迫ったところで、急死した。義満の手口は巧妙で、妻を准母に立てる際、二つの先例を立てて「不吉だ」と言い切った。本当は不吉でもなんでもない先例がもう一つあったのに。  女系論にも、道鏡的手口と、義満的な手口がある。道鏡的な女系論とは、「男女平等だから女系にしよう」「外国が女系天皇だから世界の潮流に合わせよう」式の単細胞な主張だ。「関係ない」「お前が合わせろ」で終わりである。一方、女系論の中にも博識な論者が少なくない。  先例を熟知して蹂躙する手口、機会があれば公開しよう。
1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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