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“スーパー銭湯”発祥のお店、開業当時の不安「建設費5億円、入浴料330円で採算が」

建設費5億円、大失敗の予感もあった初期

開業当時の施設イメージ

 先代社長の情熱を注ぎ込んで開業した日本初のスーパー銭湯「竜泉寺の湯」だが、オープン当時は苦労も多かったという。 「建設には約5億円かけました。多くの方にサウナを体験してもらうためにも、50人が入れる当時で日本最大級の超巨大なサウナ室も作りました。しかし最初の数年は思う様に客足が伸びず…。社内でも『大きい箱を作りすぎたのかなぁ』なんて会話もありましたね」(松永副社長)  銭湯は元来、自宅に風呂のない人が利用する施設だった。それが、高度経済成長とともに、自宅の風呂が当たり前になってきたことで、風呂に入りに行くという文化がほとんどなくなっていたことも影響していたと、松永副社長は分析。苦節の期間も長かったと話す。 「当時はSNSもないので口コミの広がりにも時間が掛かり、開業後2~3年は採算が取れず大変な時期が続きました。それでも、いいものを作った自信はあったので、いつかは来ていただけるようになるとは信じていたんですが、やはり不安はありましたね」

認知を広めた「もう一つの日本初」

 その自信のとおり口コミによって徐々に「竜泉寺の湯」も客足が伸びてきた。それに比例するように全国にスーパー銭湯を名乗る施設も増加。その流れをさらにブーストさせたのもまた「竜泉寺の湯」によって日本で初めてスーパー銭湯に導入された「炭酸泉」だった。 「ある新聞に、デイケアセンターで炭酸泉を導入した記事が載っていました。その中で、記者の方が炭酸泉を体験して絶賛していたんです。それを先代の社長が見かけて、その日のうちに全店導入を決めました」(松永専務)  炭酸泉も現在では、スーパー銭湯だけでなく温浴施設になくてはならない設備だ。とはいえ、こちらも導入当初は一筋縄ではいかなかったようだ。 「最初は『ぬるすぎる!もっと熱くしろ!』なんていう声もありました。炭酸泉は長くじっくり入って温まるものなので、『ゆっくり入ってみてください』とお伝えしていたのですが、全然信用してもらえなくて『もうこんな風呂入らん!』というお客様もたくさんいらっしゃいました」(松永専務)  それでも、館内に炭酸泉によって期待できる効果を掲示するなど、努力を積み重ねて徐々に認知と人気が広まっていった。 「人気が出はじめると、他のスーパー銭湯の方も炭酸泉を体験しに来られたりして、どんどん広まって、今ではスーパー銭湯の当たり前の光景になりましたね」(同氏)

「竜泉寺の湯」高濃度炭酸泉

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スーパー銭湯をコロナ禍から救ったものは?
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