流行語に「知らんけど」がトップ10入り。なぜ関西弁は全国的に好まれるのか
『ユーキャン新語・流行語大賞2022』に「知らんけど」がトップ10入りした。また、ネット掲示板でも「ワイ」「ええんやで」「すまんな」といった“猛虎弁”というエセ関西弁でやり取りする文化が定着しており、関西弁の使い勝手の良さを感じる。
方言はいろいろあるにもかかわらず、なぜ関西弁は好まれるのだろうか。『応用社会言語学を学ぶ人のために』(世界思想社)の著者で、奈良大学文学部国文学科教授の岸江信介氏に話を聞いた。
「知らないけど」「わからないけど」ではなく、「知らんけど」が若者の間で流行った理由を聞くと、「この表現は関西で談話の最後で用いられることが多いです」と説明を始める。
「例えば『この漫画はおもろいなあ、知らんけど』というように、先に述べたことに対する責任を回避するために使用して、これに聞き手はすかさず『知らんのかいな』という合いの手を入れる、という掛け合いがよく見られます。言うならば、ボケ(知らんけど)とツッコミ(知らんのかいな)です。
ただ、80年代以前は東京ではまったく理解されません。それどころか、『知らないのに言うなよな!』という批判を受けることも多く、さらには“関西人=よくしゃべる、なれなれしい、ケチ、デリカシーに欠ける”というマイナスイメージを持たれていました。
しかし、お笑いブームに乗って80年代以降、関西のお笑いが東京でも見られる機会が増え、次第に関西弁のおかしさが少しずつ理解されるようになりました。90年代に入ってからも関西弁は東京でも認知され、関西流のボケとツッコミを関東でも面白がるようになり、これまでになかった共通語の会話内でも率先して織り込まれるようになりました」
続けて「共通語だけで話すよりも、『関西弁を交えることで、話し言葉に変化をもたらすことができる』と感じている若者が増えたように思います」と深堀りする。
「関西弁を『かわいい』と捉える若者は首都圏で増え、好感が持たれるようになり、マネして話すことが多くなっています。関西弁には共通語にはない、関西独特の発想や関西独自の言い回しが豊富です。関西弁を自分の話し言葉にほんの少し加えるだけで、『共通語オンリーでは醸し出すことができない、関西独特のユーモアを表現できる』と考える人は多いのではないでしょうか」
とはいえ、「私が2000年ごろに実施したちょっと古い意識調査ではありますが」と前置きしつつ、「関西弁に対するアレルギーの低下は主に首都圏に見られる流れです。茨城や栃木など北関東では依然として、関西弁に対するネガティブな意識は根強く残っていました」と地域差を語った。関西弁が必ずしも全国各地で受け入れられているというわけではないのかもしれない。
関西のノリが徐々に浸透した
関西弁は変化をもたらせる
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