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想定外の人事?植田日銀総裁候補、注目すべき三つのポイント/倉山満

植田新総裁で注目すべき三つのポイント

 第一は、インフレ目標だ。仮に新総裁が国会で承認されれば、岸田文雄首相は、政府と日銀の協定を新たに結び直すだろう。この時、「2%のインフレ目標」がどうなるかだ。すぐさま下ろすのか、それとも「何年かかってもやる」などと事実上の努力目標にしてしまって棚上げしてしまうのか。「安定的にインフレ率が2%を超える状態が定着するまで続ける」なら安心だが。  第二は、YCCの解除だ。植田氏は何度もYCCに懐疑的な発言をしている。市場関係者の中には、「総裁就任最初の政策決定会合となる4月27日に解除するのではないか」との声もある。その効果(ダメージ)がどれくらいになるか、計り知れない。マイナス金利を維持したとしても。  第三は、マネタリーベースの供給をいつまで続けるか。  仮に黒田路線を続けるなら、半年くらいは現状維持。その後、任期1年以内に、YCCとマイナス金利を解除。マネタリーベースの増加を最終的にやめるのは、3年くらいか。

岸田首相が想定外の人事を行ったワケ

 ところで、岸田首相は誰もが想定しなかった人事を行った。多くの名前が候補に挙がったが、露骨に黒田路線を修正する人物は避け、無難な人選を行ったと見られている。アベノミクス修正を牽制した自民党安倍派に配慮したとも伝わる。  私は黒田路線を続ける正しい経済政策を行ってくれる人物として、若田部昌澄副総裁の昇格を訴え続けた。もちろん、早くから若田部排除が大勢となっていたのを百も承知で。仮に安倍元首相が健在で、安倍派100人が結束して「若田部一択」を要求すれば、通ったのではないかとすら想像できる。党内第四派閥を率いるに過ぎない岸田首相が最大派閥の意向を無視できないのは、理の当然だ。安倍抜きの安倍派に対してすら、こうなのだから。

植田氏の脇の甘さを承知して選んだ可能性も

 それにしても、「次期総裁に植田氏」の第一報が流れてからの報道は、異常だ。さっそく『週刊新潮』と『週刊文春』が揃って、植田氏の「女好き」を伝える。こんなもの、関係者には周知であり、岸田官邸には相変わらず身体検査能力がないのか。色んな人に断られたから、検査が間に合わなかったのか、とも勘繰りたくなる。  だが、別の可能性もある。岸田官邸が、植田氏の脇の甘さを承知して、日銀総裁に選んだのかも。というのは、日本の金融政策を決定する政策決定会合のメンバーである、1人の総裁、2人の副総裁、6人の委員は、日銀法で裁判官並みの身分保障がある。首相が指名し、国会が同意すれば、仮に裏切られても手出しできないのだ。
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かの小泉純一郎首相は日銀法に守られた福井総裁に手出しできなかった
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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