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常に不安定な「皇位継承の伝統」をいかに守るか/倉山満

誰か確認したのか? 陛下の大御心が「秋篠宮家に皇位を渡すな」だと

 おかげさまで、新著『決定版 皇室論 日本の歴史を守る方法』(ワニブックス)が売れ行き好調である。 皇居一般参賀 可能な限り易しく書いた。「本来、他人の家について語るのは失礼である」から、始まる。誰もが共有できる常識のつもりだった。ところが、これを理解できない人が多い。たとえばSNSで秋篠宮家の悪口を書きなぐっている連中。語る価値なし。  問題は、要路者(重要な地位にいる人)が流言に騙されている場合があることだ。私のような地下(ぢげ)人でも「実は陛下の大御心は……」の類の噂話は何度も聞いた。要するに、「陛下の御意志は秋篠宮家に皇位を渡したくない」だ。皇室における掟を知らない人々が、そのような噂話を信じて猛進した場合、話がこじれる。盲信した人に下手な影響力があった場合は、なおさらだ。ちなみにどの陛下なのかは、三通り聞いたことがあるが、どうでもいい。  誰か確認したのか? 陛下の大御心が「秋篠宮家に皇位を渡すな」だと。想像による推理は許されない。

時の天皇すら破ってはならない掟が皇位の男系継承である

 奈良時代末期、第48代称徳天皇の御代、「次の天皇には道鏡を就けよ」との宇佐八幡宮の御神託が下った。天皇の寵愛を受ける道鏡は最高権力者だが、単なる臣下の男。臣下の男が皇族、ましてや天皇になった先例は一度もない。当時の朝廷は全員一致で御託宣の真意を確認することに決し、和気清麻呂を派遣した。結果は「我が国には君臣の別がある」である。道鏡の登極は阻止され、掟は守られた。西暦769年の話である。  古代日本には既に、時の天皇すら破ってはならない掟が確立していた。皇位の男系継承である。初代天皇神武天皇の伝説より現在の第126代今上天皇まで、一度の例外もない。  古くは、第22代清寧天皇の御代と第25代武烈天皇の御代、当時の皇室の直系に後継者がおらず、皇位継承者が絶えそうになった。当時の日本人は皇室の血を引く男子を探し出し、皇統を守った。西暦だと何年か特定できないほど古い時代の話だ。第23代顕宗天皇と第26代継体天皇は、後世の先例となった。第102代後花園天皇と第119代光格天皇である。後花園帝は伏見宮家、光格帝は閑院宮家からの傍系継承だ。現代において、旧伏見宮家を復活させようとの動きは、これらの先例に従おうとしているのだ。別に、昨日まで国民だった一般人の男が今日から皇族になって、明日から天皇になる話ではない。本来ならば皇族の身分にお生まれになるはずだった方々に親王宣下、次世代の皇統を担う悠仁殿下をお守りいただこうとの話だ。
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皇神・アマテラスが女性だから、女系継承が伝統のはずだなど、何を考えているのか
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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