更新日:2023年03月15日 16:14
エンタメ

安藤サクラ主演『ブラッシュアップライフ』がヒットした5つの理由

理由2 地方都市を舞台にした点

 この作品は架空の地方都市・埼玉県北熊谷市を舞台の中心にしている。大概のドラマは東京の港区や渋谷区など都心部が舞台となるから異色だ。  ただ、それは目先を変えたわけではなく、必然性があった。物語のキーワードが「幼なじみ」だから、同じ公立小中学校に通ったほうが描きやすい。遠方からも通う子供もいる私立小中学校組が多い都心部を舞台にするより、地方のほうが良かった。  麻美を始め、登場人物は地元から心が離れない。これも地方ならではのこと。都心部以外に住む現実の視聴者も多くが地元に拘っているはず。ひところ地元に拘る人を「マイルドヤンキー」と呼んで特別視する風潮が一部にあったが、これは不可思議な話だった。人が母国や出身地、地元に思い入れを抱くのは世界的に見ても当たり前の話なのだ。  だから高校野球やJリーグなど地元色が強いスポーツが盛り上がる。海外サッカーも地域のチームを応援する。麻美らの成人式後の飲み会は通っていた公立中学校単位で行われたが、そんな例は数多い。地元に拘っているからだ。  地方都市感を出すため、実在する「ラウンドワン」や「夢庵」「ココス」「ジャスコ」などを登場させた。これは違う意味でも作品に役立っている。  タイムリープや幽霊などが出てくる現実離れした物語の場合、それ自体が大ウソだから、ほかの部分はなるべくリアルにしたほうがいい。そうしないと、観る側を大ウソの世界に引き込めない。小説や映画にも通じる鉄則である。「ラウンドワン」などが実在するから、非現実的な物語の説得力が増した。

理由3 物語のシンプル化が図られている

 麻美は人生5周目、まりりんは6周目。ややこしい物語のようだが、なるべくシンプルになるよう努められている。たとえば、なっち、みーぽんのパーソナルデータは全く分からない。  2人の職業は明かされていないし、交際している相手の有無も不明。物語の本筋とは関係ないから、思い切って削ぎ落としたのだろう。麻美が人生をやり直すたびに成人式後にレミオロメンの『粉雪』を歌い、その歌声を耳にこびりつかせた加藤(宮下雄也)に至ってはセリフすらないに等しい。その分、麻美の5周におよぶ人生を克明に描けている。
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世界的映画並みの出演陣
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放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員

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