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日銀次期総裁・植田氏から取った“言質”。今ほど日本をよくできる局面はない/倉山満

植田総裁に問うべき六つの質問

 正副日銀総裁は国会同意人事と言って、総理大臣の指名後に衆参両院で、所信聴取と質疑。その後に採決となる。では、「どうなるか?」よりも「どうするか!」。  私が理事長兼所長を務める救国シンクタンクでは、「植田総裁に問うべきこと」という六つの質問をまとめ、日ごろ付き合いがあって興味がありそうな国会議員にお渡しした。どこをどう伝わったか、結果すべて聞いていただいた。そして、植田総裁予定者から言質を取れた。以下大意を解説する。 第一の質問。「金融緩和の効果をどう考えるか。かつては批判的だったようだが」  植田予定者の答弁は、(福井総裁時代の)量的緩和に関してはやりかたがまずかった。今の黒田総裁時代は質的緩和であり、極めて効果的だ。  つまり、黒田総裁時代の「異次元の金融緩和」をしばらく続けるとの宣言だ。 第二の質問。「マイナス金利の副作用については」  答弁は、副作用はあるが、限定的であり、緩和策も行われている。  マイナス金利は、今や金融緩和を支えている。これに高い評価を与えた。続ける気だ。 第三の質問。「YCC(イールドカーブコントロール)を見直す気か」  答弁は、副作用はあるが、緩和もされている。色々な具体策があるがここでは差し控える。  YCCは金利をコントロールする方策だ。これまた金融緩和を支える政策だ。これには言質を与えなかった。さすがに相場に影響を与えるので言えなかったとも言えるが。

植田氏は景気回復策をやめるような真似をしないと宣言した

第四の質問。「インフレ目標を見直す気はあるか」  答弁は、直ちに変える必要はない。  10年前に当時の安倍晋三首相と黒田東彦総裁が共同声明で政策目標を共有、2%の物価上昇率を達成するまで異次元の金融緩和を続けると約束したが、これを変える気はない。要するに金融緩和をしばらく続けるとのことだ。 第五の質問。「今のインフレ率をどのように考えるか」  答弁は、様々な指標があるが、賃金の上昇も含めて注視したい。  今がインフレ傾向だからと、かつての日銀のようにいきなり金利を引き上げて、景気回復策をやめるような真似をしないと宣言した。 第六の質問。「賃金の上昇をどう考えるか」  答弁は、日銀が賃金上昇を約束することはできないが、企業などが賃金を上げられる環境を作るべく最大限の努力をする。
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私は「言質取ったぞ!」と叫んでしまった
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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