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日銀次期総裁・植田氏から取った“言質”。今ほど日本をよくできる局面はない/倉山満

日銀人事の問題は浮気で別れた恋人と復縁するのと同じ

 この問題、難しいように見えて、要するに「あなたは、浮気で別れた恋人と復縁しますか? 信じられますか?」と同じだったりする。  次期日本銀行総裁に予定されている植田和男・東京大学名誉教授、副総裁に予定されている氷見野良三・前金融庁長官と内田眞一日銀理事に対する、所信聴取と質疑が衆参両院で行われた。  この3人の言うことは、まるで示し合わせていたかのように同じだった。もちろん、正副日銀総裁になろうとしている3人が摺り合わせ、していないはずがないが。  10年に及ぶ「異次元の金融緩和」は、景気回復まで達成半ばで黒田東彦現総裁の退任に至る。あともう少しで、デフレ完全脱却に至るところまで来た。デフレの定義は「2年連続物価が下落し続けること」だから、この意味でのデフレは脱した。  しかし、まだまだ国民に好況感は無い。数字で言えば、2%の物価上昇率が安定期に入ったとは言い難い。ウクライナ危機による資源高で物価が上がっているだけだ。コストプッシュインフレと言って、経済が成長しているから物価が上がっているのとは違う。  だが、それでもデフレよりはマシだ。デフレ完全脱却まで、あと一息! 2%の物価水準を安定させる正念場だ。ただし、ここですべてを台無しにしたら、今度はどうやって経済を立て直せばいいのか、もはや見当もつかない。

日銀はいわば「前科四犯」

 そもそも、バブル崩壊以後、ここまで不況が長期に及んだ原因は何か。歴代日銀総裁、特に日銀出身者が政策を誤ったからだ。  バブルをハードクラッシュさせた三重野康、失われた10年をもたらした速水優、小泉内閣の景気回復策を後ろから刺した福井俊彦、リーマンショックから地獄のデフレへ叩き落とした白川方明。いわば日銀は「前科四犯」だ。  今度の植田新執行部は、内田眞一副総裁予定者が中心人物と見られている。「前科四犯」の言い方、厳しいか? ならば言い直そう。10年前、4度の浮気が理由で別れた恋人が復縁を迫ってきた。「今度こそ信じてくれ!」と言われて信じられるか?  植田総裁予定者の信頼性に関しては、前号前々号と疑念を呈してきた。世間では「速水執行部に楯突いた良心的学者」のように語られるが、真相は違う。本音は、金融緩和なんか大嫌いだ。実際、そういう言動を残している。  意外とどうでもよくないのだが、名前が漏れるや早速、最初の号の『新潮』と『文春』で「植田総裁の女好き」が軽いジャブのように報じられた。
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植田総裁に問うべき六つの質問
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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