お金

日銀が「国債」を買い続けている意味ってなに?元日銀副総裁がわかりやすく解説

国債金利が大きく低下すると、貸出金利も低下する

 ’13年度の長期国債の購入額は63兆円で、’12年度の約3倍に達しました。また、あらゆる満期の国債金利を大きく引き下げるため、買い入れ対象を40年債を含む全ゾーンの国債としました。  国債金利とはやや正確性を欠きますが、固定された国債利息を国債の市場価格で割った値と定義されます。日銀が大量に国債を買えば、国債価格が大きく上昇するので国債金利は大きく低下します。  国債金利が大きく低下すると、銀行は資金を国債で運用するよりも企業や家計に貸し出したほうが有利になるため貸し出しが増え、貸出金利は低下します。その貸出金利は貸し出す期間と同じ満期の国債金利との比較で決まるためです。

国債を買い続けているのは、緊縮財政政策のため

 企業の設備投資や家計の住宅投資、自動車のような耐久消費財の購入は、長期に使用するモノの購入ですから、長期貸出金利が低下すれば、増加します。これらの増加はすべて需要の増加ですから、需要不足のために起きている経済停滞やデフレの解消に繋がり、物価は上昇します。  ただし、安倍政権時代のように、消費増税や基礎的財政収支(税収・税外収入と、国債費<国債の元本返済や利子の支払いに充てられる費用>を除く歳出との収支)の赤字削減を急ぐなどの緊縮財政政策を採用すると、金融緩和の需要増大効果を削いでしまいます。  日銀が「量的・質的金融緩和」を開始してから、ほぼ10年経っても、2%のインフレ目標が達成できずに、国債を買い続けているのは、緊縮財政政策のためなのです。
次のページ
岩田の“異次元”処方せん
1
2
3
東京大学大学院経済研究科博士課程退学。上智大学名誉教授、オーストラリア国立大学客員研究員などを経て、’13年に日本銀行副総裁に就任。’18年3月まで務め、日本のデフレ脱却に取り組んだ経済学の第一人者。経済の入門書や『「日本型格差社会」からの脱却』(光文社)、『自由な社会をつくる経済学』(読書人)など著書多数

記事一覧へ
おすすめ記事