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植田日銀、初の記者会見では「模範解答」も、本当に景気を回復させるまで監視が必要だ/倉山満

景気回復目前。ここでやめては、元も子もない

 そこで金融緩和を維持する為に、「マイナス金利」「YCC」を導入した。マイナス金利とは、日銀が市中銀行への利子をマイナスとすること。銀行が民間へ貸し出すよう促す政策だ。YCC(イールドカーブコントロール)とは、国債の金利が高くならないようおさえつけること。要するに、低金利政策である。利子が高いとお金を借りようとするマインドが冷え込み、投資が促されず、景気は活性化しない。  マイナス金利やYCCのような、本来ならば不要の政策まで使って、なんとか景気回復目前まで来た。ここで景気回復策をやめてしまっては、元も子もない。  そこで、植田総裁就任前の国会での所信聴取と質疑では「黒田路線を続けるのか否か」が焦点となり、植田総裁(その時点では予定者)は、「続ける」と明言した。結果、自民・公明の与党の他に、野党の立民・維新・国民を加えた、主要五党の賛成で就任した(ただし立民は「金融緩和を止めると判断した」との謎の判断で、内田副総裁には「黒田体制の責任者」と反対した)。

大規模金融緩和を「見直す必要はない」

 そして10日が、総裁就任後初の記者会見である。これが圧巻だった。  黒田前総裁が結んだ政府との政策協定に関しては「見直す必要はない」。  大規模緩和を続けるとした上で、金融緩和単独だと限界があるが、政府の協力により効果を発揮する。  2%のインフレ率の達成は簡単ではないが、可能。  マイナス金利は、続ける。  そして識者から、最も注目されたのがYCCだ。「現行のYCCを継続するということが適当であるというふうに考えております」である。学者時代から植田氏はYCCに懐疑的と言われたが、今この瞬間にYCCやマイナス金利を解除できる経済状態ではないと認識しているようだ。  この点に関し、財務省出身の氷見野良三副総裁は「私からは特に付け加える点はございません」とだけ。
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「植田さん、ここまで言ったし、さすがに裏切らないだろう」などと他人事だと裏切られる
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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