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高市早苗氏と小西洋之氏「行政文書」対決に感じた5つの違和感/倉山満

偏向していたかつての放送法の中立性の解釈

 昔は当たり前だった。テレビでアナウンサーが、あの国を表現するのに「北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国は」と、冒頭で必ず正式名称を読み上げなければならなかった。放送は、実に偏向していた。
高市早苗経済安保相 小西洋之氏

3月8日、参院予算委で立憲民主党の小西洋之氏(右)に対し、高市早苗経済安保相(左)は自身の発言として記された4枚の文書の内容が「事実であれば私は責任を取る」と述べた 写真/産経新聞社

 それが、2002年の小泉純一郎首相の訪朝以降は、「北朝鮮」あるいは「北」で十分となり、是正されていく。やがて安倍晋三内閣の時代には、放送法の厳格適用を求める声が大きくなる。それまでの放送法の中立性の解釈は、「そのテレビ局の番組編成全体の中で偏向しないようバランスを取るべし」だったのが、当時の高市早苗総務大臣が「一つの番組の中で極端な偏向がないように」との新解釈を示した。

小西文書の中身は公文書だから本物なのか

 この過程で、首相官邸からの圧力で高市大臣が解釈変更に及んだのではないか、と立憲民主党の小西洋之参議院議員が総務省の公文書を証拠に迫っている。こうしたやり取りを端的に言うと……。 小西「貴女が悪いことをしたとする公文書がある。ここに書かれてあることが、もし本当だとしたら議員辞職するか」 高市「結構だ」  とのやりとりだ。  そして、小西議員が示した文書が、本当に公文書だった。しかし、本当に公文書ならば小西議員こそ、公文書の持ち出し(国家機密漏洩?)で問題ではないか。などなど、百家争鳴だ。また、高市大臣は「もし私を議員辞職に追い込みたいなら、立証責任は小西議員にあるのではないか」と反論、余計に反発されている。また、中身が本物かどうか、公文書なのだから本当のことなのだろうとの見方も広がっている。  この光景、文書学を学んだ者として違和感がある。五つの観点から指摘しよう。
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間違っても一つの史料を金科玉条にして「ここに書かれていれば事実だ!」などと吹聴するなど、許されない
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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