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「首相官邸との関係」に腐心している財務省/倉山満

日銀から唯々諾々と説得されてしまうのが今の財務省の力か

 ところが実際に副総裁に就いたのは、氷見野良三(ひみのりょうぞう)元金融庁長官。氷見野副総裁は金融システムの専門家として国際的にも評価が高いが、日銀から「ウチに来てもらうには専門家でなければ困る」と唯々諾々と説得されてしまうのが、今の財務省の力なのか。もっとも、氷見野氏がそのまま総裁に昇格するとは見られておらず、5年後が人事バトルと見た一時的撤退の可能性もある。  日銀人事は、現役事務次官が取り仕切る最重要事項。その責任者の茶谷栄治(ちゃたにえいじ)事務次官が留任した(表参照)。茶谷次官は大物次官の条件とされる任期2年を全うすることとなりそうだが、「日銀人事で負けていない」ということか。茶谷次官の次が確定の新川浩嗣(しんかわひろつぐ)主計局長も留任。  その代わり、日常的に日銀と接する官房総括審議官の奥達雄氏が理財局長に回された。理財局長は本流から外れ、「国税庁長官で上がり」と目されているポストだ。

「傀儡」と呼ばれるのを嫌う岸田首相のネジを巻きに来たか

 その奥氏の上司で、組織全体の切り盛り役だった青木孝徳(あおきたかのり)氏も主税局長に回った。主税局長も国税庁長官ルート。青木主税局長の場合は事務次官の芽が無い訳ではないが、どうなのだろう。同期の宇波氏が官房長に戻ってきて事務次官ルートに入った。財務省改名以来官房長経験者は全員が事務次官になっているが、絶対ではない。  宇波官房長の本省帰還で、代わりに首相秘書官に就いたのが、一松旬(ひとつまつじゅん)主計官。主計官は課長級ポスト。  一松新秘書官は、「将来の事務次官間違いなし」「10年に一度の大物」と評される。社会保障費削減で辣腕を振るい、医師会からは仇敵の如く扱われている。どうでもいいが、藤原不比等以来の家系図を有する名門。首相秘書官を本来の課長級ポストに戻した点と、一松氏程の大物を送り込んだ点、どちらの比重が大きいか。  増税と日銀人事、そして「傀儡」と呼ばれるのを嫌ってか、ムキになって増税を否定する岸田首相の、ネジを巻きに来たと見るべきだろう。
1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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