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日本がアジア太平洋で自由主義陣営を支えなくて、誰が支える?/倉山満

“ソコソコ”頑張っている岸田文雄首相

 世界の最大関心事であろうウクライナ事変は、相変わらずだ。今のところウクライナが善戦しているが、国力差は挽回しがたい。ウクライナが欧米の盾かつ走狗としてロシアを苦しめている間も、中国は虎視眈々と勢力を伸ばしている。日本が属するアメリカ陣営も、必死に対抗している。我らが岸田文雄首相も“ソコソコ”頑張っているようだ。
CHINA CENTRAL ASIA SUMMIT 習近平主席

G7サミットと時を同じくして、中央アジア5か国の首脳を招いて中国で開かれた「中国・中央アジアサミット」。「包囲網をけん制する狙い」と報じられているが、果たして―― 写真/時事通信社

 日本では注目されないが今月、国際政治では大きな選挙が二つあった。タイとトルコだ。それより日本のメディアの関心事はサミットか。  何にせよ、部分を見る前に全体を見よ。

中国の実態はロシア寄りの中立

 現在の国際政治の二大アクターは、アメリカと中国だ。アメリカの覇権を奪わんと、中国が挑戦している。ただし、中国人の時間軸は日本人には想像もできないほど遠大だ。  世界の主要争点の中で、アメリカはヨーロッパとアジア太平洋の二正面で挑戦者と張り合わねばならないが、中国はアジア太平洋でアメリカに勝てばいい。ヨーロッパでは、ロシアが盾となってくれている。ロシアがウクライナで暴れれば暴れるほど、アメリカの力を削げる。ロシアが疲弊すれば中国への従属が強まる。米欧はこれがわかっていながら、ウクライナに肩入れするしかない。  中国はウクライナ事変で表向きは厳正中立を保ちながら、実態はロシア寄りの中立だ。何の拘束力も無い国連決議でこそ、ロシアの味方はほとんどおらず、世界の多数派はロシアの侵略を非難した。しかし、実際に経済制裁を行っているのは、ほとんどがNATO諸国で、白人以外では、日本・韓国・台湾・シンガポールだけだ。東南アジア・中東・アフリカ・中南米は、中国とともに中立だ。つまり、アメリカ陣営は世界の多数派でも何でもない。シンガポールの軍事力は皆無だし、韓国や台湾は自分が狙われる立場だ。「日本がアジア太平洋で自由主義陣営を支えなくて、誰が支える?」という状況なのだ。
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一部マスコミの言うような「対中包囲網」など幻想で、むしろ我々が包囲されているくらいだ
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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