更新日:2023年07月20日 10:03
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“12浪”の早大生が就活した結果…「8年生だから37歳なのに新卒」

途中まで3浪のフリをしていた

実は田中さんは入学から3年間、“12浪”を隠し続けて来た。 「ずっと『3浪です』ってウソついていました。入学式の後の初顔合わせときに『1浪です』って言ったら『本当に?』って疑われたので1つずらして2浪っていうことにしたんですが、それも途中から怪しまれるようになったので、老け顔の3浪で通していました。なにかカマをかけてこいつの本当の年齢を暴いてやるといった疑念の目も周囲から時折感じていたので、パっと答えられるようにダミー用の和暦や干支も、常に暗記していましたね」 3浪の時点ですでに珍しい存在のためか、それ以上ツッコミが入ることはなかった。だが、サークル活動の些細な出来事から、ウソが露呈した。 「ある日、大学の会議室を借りるために自分の学生証を事務所に預けたんですが、ちょうど新歓の時期で慌ただしく、サークル仲間の女子に『俺の代わりに学生証取りに行って』と頼んでしまい……。学年では同期でしたが、年齢は干支で言うと一周分年下でした」

本当に尊いのは「見守り通した親」

戻って来た女子の表情は異様に固く、神妙だった。 「相手は無言でしたが、見てはいけないものを見たという感じだったので、『言わないで』とだけ伝えました。でも、後日みんなでカラオケに行った時に受付で学生証を提示するよう求められて、カウンターにみんなが並べ始めたことがありました。『やべえ』と思って出してすぐ引っ込めたら『動きおかしくない?』って追及され、結局バレてしまったんです」 仲間たちは最初は仰天したものの田中さんを受け入れ、その年の学園祭では「11浪なんです僕は」というカミングアウトをテーマに講演会を行った。 「あとになってわかったのですが、本当は12浪だったのです。年数を数え間違えていました。両手で数えられないと難しいですよね。実際何浪したのかもう覚えてないというか、数えてないというか。 なので、翌年は『実は12浪でしたごめんなさい』とのテーマでもう一度講演を行い、今度は母親にも登壇してもらいました。母親は『受験を止めたら自殺すると思ったので続けさせた』と本音を語ってくれました。結局本当に尊いのは、浪人した本人ではなくそれを許し見守り通した親なんですよね」
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背負い続ける「12浪」の十字架
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