更新日:2023年07月13日 14:59
エンタメ

2023年夏ドラマ15本を総ざらい。恋愛、職業、人間…ジャンル別に見れば世相がわかる

 夏ドラマが始まった。プライム帯(午後7時~同11時)には計15本ある。その傾向を読み解きたい。ドラマには必ず時代が表れる。まず恋愛ドラマが3本ある。春ドラマより1本減ったが、多いことに変わりはない。日本独特の特徴だ。

<恋愛ドラマ>異なる立場の男女の出会いがトレンド 

真夏のシンデレラ

『真夏のシンデレラ』番組公式HPより

『真夏のシンデレラ』(フジテレビ、月曜午後9時、10日から)主演・森七菜(21)、間宮祥太朗(30) 『18/40~ふたりなら夢も恋も~』(TBS、火曜午後10時、11日から) 主演・福原遥(24)、深田恭子(40) 『こっち向いてよ向井くん』(日本テレビ、水曜午後10時、12日から) 主演・赤楚衛二(29) 『真夏のシンデレラ』で森が演じるのは神奈川・江ノ島で生まれ育った蒼井夏海。サップトレーナー兼カフェ店員だ。美容師アシスタントの滝川愛梨(吉川愛)、クリーニング店店員でシングルマザーの小椋理沙(仁村紗和)と仲が良い。  一方、間宮が扮するのは東京で大手建築会社に勤務する水島健人。高校時代からの友人で、エリート意識の強くて偉そうな医師・佐々木修(萩原利久)、司法試験浪人生・山内守(白濱亜嵐)と一緒に江ノ島へ遊びに来た。3人とも東大を含む一流大卒なのだそうだ。この6人に江ノ島の男女も絡む群像劇となっている。  設定はこうである。「通常なら交わるはずのない住む世界の異なる男女が真夏の海で運命的に出会い、複雑に交錯した感情や本音をぶつけ合いながら成長していきます」(ドラマのホームページより) 「住む世界なんて、学歴や職業を問わず一緒だ」などと考える人には受け入れにくいだろうし、逆に青春のまぶしい日々を懐かしんでいたり、真夏の出会いに憧れていたりする人にはたまらなく魅力的な作品になるのではないか。最終的に成否のカギを握るのはヒロイン・森の演技になると見る。 『18/40』で福原が演じるのは高校3年生の仲川有栖。美術館で展覧会の企画などを担当するキュレーターを目指しており、大学の文学部芸術学科への進学も決まっていた。しかし、妊娠が判明する。お腹の子の父親は大学生の彼氏・康介(八木勇征)。一大事である。

恋人のいない若い世代の多さを反映

 一方、深田が演じるのは成瀬瞳子。もうすぐ40歳になる敏腕ビジネスパーソンで現代アートとビジネスをつなぐ仕事をしている。恋愛からは遠ざかっている。  有栖と瞳子はたまたま出会い、やがて友情を育む。こちらの設定は次の通り。「年の差が倍以上で生き方も立場も違う2人が偶然出会うことによってお互いの人生が大きく変わる」(ドラマのホームページ) 『真夏のシンデレラ』は「住む世界」の異なる男女が交わり、『18/40』は女性同士が「年の差」などの違いを乗り越える。置かれた状況に差異のある者同士が結び付くのが、現在のドラマ界のトレンドの1つらしい。世間もボーダーレスの時代なので、合致している。 『こっち向いてよ向井くん』の主人公は33歳のサラリーマン・向井悟。10年前に最後の彼女・藤堂美和子(生田絵梨花)と別れて以来、恋愛をしていない。  そんな向井の職場に、新人の中谷真由(田辺桃子)がやって来る。向井は「あれから10年、給料も上がったし、仕事も余裕が出てきたし、今の俺なら」と考えたが、うまくいくのかどうか。  現実世界でも恋人のいない若い世代が増えている。20〜40代の未婚男女のうち、恋人がいない人の割合は66・6%。 (リクルート、2021年調べ)。向井という男にも時代が投影されている。
こっち向いてよ向井くん

『こっち向いてよ向井くん』番組公式HPより

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転職エージェント、裁判所の執行官…斬新な設定の職業ドラマ
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放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員

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