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上司に媚び、“格下”を徹底的に潰す「問題社員」。自分が“特別な存在”だと確信する心理とは

 今回は「府中こころ診療所」「こころ診療所吉祥寺駅前」の院長や医療法人社団HeartStation理事長を務める精神科医の春日雄一郎さんに取材を試みた。「府中こころ診療所」「こころ診療所吉祥寺駅前」には、自己愛性パーソナリティ障害などの人から職場や家庭でパワハラやモラハラのハラスメントを受け、苦しむ人が多数訪れる(以下は、春日医師による取材への回答)。

精神科医に聞く「自己愛性パーソナリティ障害」

 診断は患者と会うことで判断するのが基本ですから、事例だけでは判断はできません。したがって、これまでの診療の経験にもとづいたうえで推察できうる回答になります。  この男性は、自己愛性パーソナリティ障害の可能性があると思います。例えば、自分の考えや意見に固執するあまり、同僚らとのトラブルが非常に多い。一方で、直属上司や役員には上手く対処している。自分にとって利益になる人たちですから、不利益を被らないようにしているのでしょう。  自己愛性パーソナリティ障害の人は、上司などには上手く対処することが多い。利益にはあまりならない部下や同僚、外部のスタッフには厳しい態度で接することが少なからずあります。

自分がとても優れていて、特別な存在と確信

春日雄一郎

精神科医の春日雄一郎さん

 自己愛性パーソナリティ障害の大きな定義としては、自分がとても優れていて、特別な存在だと確信していることです。その意味での認知の偏りが非常に強く、3大特徴があります。  1つは誇大性と言われるもので、自らを必要以上に重要人物だと思い込んでいること。例えばほかの人とは私はレベルが違うと事実にもとづくことなく、信じています。特別と思うから、相手を利用し、奪うことをいとわないこともあります。  2つめは賞賛の欲求が過剰なほどに強く、注目を浴びたり、高く評価されたり、褒められることを求めます。逆に、否定されると強く不満を感じたり、怒る場合もあります。3つめは、共感の欠如。相手の気持ちや悩みをわかろうとしない。時に尊大で、傲慢な態度をとり、いわゆるマウントを取るようなこともします。
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成功していると周囲が困ってしまうことも
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ジャーナリスト。1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006年より、フリー。主に企業などの人事や労務、労働問題を中心に取材、執筆。著書に『悶える職場』(光文社)、『封印された震災死』(世界文化社)、『震災死』『あの日、負け組社員になった…』(ダイヤモンド社)など多数
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