仕事

上司に媚び、“格下”を徹底的に潰す「問題社員」。自分が“特別な存在”だと確信する心理とは

成功していると周囲が困ってしまうことも

 これらの傾向がある人は皆さんの周りにもいるのではないかと思います。ただ、“傾向”と“障害”は異なります。自己愛性パーソナリティ“障害”はこれらの傾向が強すぎるために周囲とのトラブルが絶えない。周囲の中には強い影響を受け、精神的に滅入ってしまい、私のクリニックに診療に来る人もいます。  自己愛性パーソナリティ障害の人が成功を続けて上手くいっていると、その周囲の人が困ってしまうことがあります。彼らは必要以上に厳しいことを言い、自尊心を傷つけるからです。逆に失敗が重なり、上手くいかなくなると、当人が怒りが続いたり、うつや対人不安、ひきこもりになることもあります。

障害を持っている事実を認め、受け入れるのは厳しい

職場 基本的には、外から本人を変えるのは難しい。本人が自己愛性パーソナリティ障害であることに気づき、変えようとしない限り、私たちのようなクリニックでもカウンセリングでも困難です。  明確な意思があり、変えようとする場合に限り、それをサポートするのがクリニックやカウンセリングになります。ただし、変えようとしても、本人にとっては受け入れるものが大きく、また元の状態に戻ってしまうこともあります。  本人が自覚していない、もしくは自覚しようとしない時は周囲が何を言っても、変わることは難しい。一方で変わろうとしている人もいますが、私が診察しているとその数は多くはありません。少ないからこそ大切にすべきで、温かく見守ることも必要でしょう。  障害を持っている事実を認め、受け入れるのは厳しいです。正しいと信じて行動をしてきたことが、実は相手に対し、加害者になっていたのを認めるわけですから。自己愛性パーソナリティ障害の人はストレスに敏感なこともあり、自分の考えの根っこを否定されるような思いにもなり、受け入れ難いのでしょう。
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3.潰されないように自己防衛をするしかない
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ジャーナリスト。1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006年より、フリー。主に企業などの人事や労務、労働問題を中心に取材、執筆。著書に『悶える職場』(光文社)、『封印された震災死』(世界文化社)、『震災死』『あの日、負け組社員になった…』(ダイヤモンド社)など多数
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