更新日:2023年09月01日 12:54
スポーツ

「自力優勝の可能性が消滅した」DeNA。1998年の優勝を知る首脳陣たちが“前半戦”を振り返る

捕手3人を先発投手に合わせ起用する独自の戦術

1998年の遺伝子

1998年、優勝当時の集合写真

 今季のベイスターズの象徴的な選手起用法は、3人制を敷く捕手にもある。現役時代に三浦監督と長い間バッテリーを組んだ、相川亮二チーフ作戦兼バッテリーコーチはその意図を説明する。 「複数の捕手でシーズンを乗り切る戦術は、他のチームでも見られます。確かに今季のウチのように捕手3人制は珍しいですが、今永昇太に戸柱恭孝、バウアーに伊藤光、東克樹に山本祐大。彼らはそれぞれの持ち味を生かして素晴らしい成績を残してくれています。  バッテリーは投手と捕手の相性が大きい。今年は投手に先発を伝えるタイミングで捕手にも先発を伝えて、十分な準備をしてもらったうえで試合に臨んでもらってます。レギュラーが固定されていない3人は、モチベーションを保つのは大変だと思います。  ただ、チームとして考えたとき、勝つことが最優先事項。毎日ではないけれど週に2度の先発マスクに集中してほしいし、ゲーム後半で代打攻勢を仕かけたあとの守りで、どの捕手が出てもレベルの差がないのが、ウチの捕手陣の強みにもなっています」

’23年を象徴するベイスターズ独自の戦術のひとつに

 驚くことに、今シーズン、ベイスターズは開幕から同一捕手が4試合以上連続でスタメン起用されたケースが一度もないまま前半戦を終えた。近代野球において捕手2人制は時折見かける起用法だが、このまま捕手3人制でペナントを戦い抜くと、’23年を象徴するベイスターズ独自の戦術のひとつになる。  そして、指揮官である三浦監督は前半戦をこう総括した。 「最近、点を取れない試合が続いてますが、それはお互いさま。点が取れないときは投手陣が踏ん張っていれば、野手が奮起して点を取ってくれる。野球は持ちつ持たれつのスポーツ。 (ホームで3連敗を喫して)オールスター休みに入りますが、今日、試合後の選手たちの表情を見ていると“何とかしてやろう!”という悔しい気持ちがみんなから溢れていた。それを後半、ぶつけられるように持っていきます。  選手たちには改めて『キャンプ、開幕の頃の気持ちを思い出そう!』と問いかけました。今年は走・攻・守全てにおいて全員が全力でやる、とチームの約束事を掲げました。それを全員が、前半戦、できていたかどうか、できなかったことがあれば自分に問いかけて振り返ってほしい」  1998年の優勝から25年ぶりとなる優勝のチャンス。選手たちが過去の呪縛に縛られることなく、全力で戦い続けているとき、’23年のベイスターズは、これまでの球団史にはないオンリーワンの個性あるチームとして、実りの秋を迎えることとなる。 写真/時事通信社
1973年、神奈川県生まれ。日大芸術学部卒業後の1997年、横浜ベイスターズに入社、通訳・広報を担当。'02年・新庄剛志の通訳としてMLBサンフランシスコ・ジャイアンツ、'03年ニューヨーク・メッツと契約。その後は通訳、ライター、実業家と幅広く活動。WBCは4大会連続通訳を担当。今回のWBCもメディア通訳を担当した。著書に『大谷翔平 二刀流』(扶桑社)ほか
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