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賛否で割り切れない沖縄の基地問題。「住民への説明さえしてくれない」石垣島の現在

2010年頃からあった基地建設案。尖閣や台湾有事は後付けの理由?

――逃げていますね。 宮良:そこで私たちは裁判を起こしました。すると、石垣市議会は住民投票の根拠となる27条と28条を削除してしまったんです。すると裁判所は、審議の対象となる条例が既にないので判断はできないとして訴えを却下してしまいました(2023年5月23日)。そこで控訴することにしたというわけです。 ――基地建設に対して、率直にどう思われていますか? 宮良:基地建設の話は、台湾有事のことが話題になる以前の2010年頃からあったんです。南西シフトの話に乗っ取って、防衛の空白地帯を埋めるという話でした。情勢によって配備の意義が変わっていくので、尖閣諸島や台湾有事は基地を作るための理由づけにされているのではないかと疑うようになりました。
石垣駐屯地の正門

石垣駐屯地の正門

――駐屯地が開設されたことを島の住民としてどう評価しますか? 宮良:作ることが仕方なかったとしても、しっかりした説明もなしに、なぜここまで急いで作ったんでしょうか。住民の生活に配慮がある形だったらまだしも、実際はそうはなっていないように思えます。日本の国防を担うという側面もあるということ。そうやって重責を担わされることは、島に住んでいる者にとって、すごく怖いことです。  しかも今年、開設されて間もない駐屯地のほかに、ミサイル部隊も派遣されてきたわけですから。北朝鮮のミサイルに対抗するためだったら、PAC3をもっと北の基地に置いてもいいんじゃないですか。石垣が攻撃の起点になることのリスクってあると思うんですよ。

誰も説明してくれない基地のメリット

――2027年に台湾有事が起こる可能性が最も高いと言われていますね。 宮良:シェルターの整備は時間的にも予算的にも現実的ではない。それに島にいる約5万人もの人たちをどうやって島から避難させるんでしょうか。 ――なるほど、不安になりますね。 宮良:基地の設置は国の専権事項ということで、駐屯地が設置されました。「基地の設置は国の決定だから地元は介入できない」と石垣市長は言いますが、この駐屯地、国を守るためにあるのか、島を守るためにあるのか。結局のところ、どちらのものなんでしょうか。その答えが自分の中で見つからなくて。これまでの説明では、島に基地が置かれるメリットを私自身、感じていません。しっかりと明確に説明してくれないために不信感を抱いてしまいます。
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基地をめぐって保守も分裂
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