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賛否で割り切れない沖縄の基地問題。「住民への説明さえしてくれない」石垣島の現在

保守同士の選挙戦

 次に紹介したいのは、八重山防衛協会で自衛隊駐屯地の誘致を長年おこなってきた砥板芳行さん(といた・よしゆき、53)。昨年(2022年)の市長選挙で、保守派で現職の中山義隆氏に対抗する候補とし立候補した人だ。長年、基地の誘致に関わってきたにも関わらず、なぜ彼は、反基地を掲げているオール沖縄に支持され、立候補したのか。また基地のあり方についてどう考えているのか。
石垣市議会議員、砥板芳行氏

石垣市議会議員、砥板芳行氏

――石垣島の自衛隊駐屯地についての関わりを教えて下さい。 砥板:もともと八重山防衛協会で、自衛隊駐屯地の誘致を先頭になって主張してきました。2010年ごろまでは、防衛政策や防衛体制は国が考えることであって、住民の誘致によって自衛隊が来るようなことあってはならないと思ってきました。限られた予算、限られた人員・装備の中、防衛省は最適な防衛体制を築かなきゃいけませんから。 ――昨年の市長選立候補につながる動機というか、思いはいつごろから? 砥板:2010年以降、尖閣諸島での中国の存在感が高まるようになりました。2010年には海上保安庁の巡視船へ中国漁船が衝突するという事件がありましたし、2012年以降、中国海警局の艦船が常駐するようになりました。そのように尖閣の問題が顕在化してきてから考え方が変わってきたんです。自衛隊が正式に、先島に駐屯地を設置することを検討するようになりました。そうしたことから自衛隊駐屯地を石垣に置くということを一市民としてサポートできれば思うようになったんです。

島民の分断に危機感を抱いた砥板氏

――石垣にも基地の建設を反対する人がおられたわけですよね。彼らの思いについては? 砥板:基地建設に対して、頑なに反対する人たち、彼らが苦悩する表情を見てきたことも事実でして、同じ島民でも基地に対する考えを巡って分断されていると感じていました。この分断を埋めていく努力を防衛省はもっと積極的にやるべきだったんですが、まったくやってきませんでした。  私は市議会をこれまでに4期つとめてきたんですが、基地建設を巡る島内の分断をどうやって埋めていくのか。そのことはずっと頭にありました。そういった中で、ひょんなことから市長選に出ることになってしまった。自衛隊配備を先頭に立って推進してきた僕を、オール沖縄がまさか推して下さるとは思ってもみなかった。
石垣駐屯地に程近い山間地に張られた、感謝を伝える横断幕

石垣駐屯地に程近い山間地に張られた、感謝を伝える横断幕

――なるほど。市長選挙への立候補を機会に八重山防衛協会を辞められたんですね。 砥板:その通りです。この小さな島で分断による溝を残したままじゃいけないと思ったんです。
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揺れる石垣島と基地の今後
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