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「お前は高校なんて絶対に行けない」。親に人生を壊され、19歳で生活保護を受ける中卒女性の苦しみ

 高校授業料無償化が進められるなか、忘れてはいけない存在がいる。本人の意思とは裏腹に「中卒」にならざるを得なかった子どもたちだ。教育の機会を奪われた子どもの過酷な生い立ちと厳しい現実に迫った。

学歴コンプレックスの父親が進学に猛反対

[教育を奪われた]子どもの肖像

写真はイメージです

 トラック運転手の父親と水商売で生計を立てる母親のもとに生まれた林凜華さん(仮名・19歳)も、高校進学を諦めた一人。その背景には、やはり劣悪な家庭環境があった。 「父が高校進学に反対する理由はなんとなくわかった。プライドの高い父は、自分が中卒だから、きっと娘に学歴を超されたくないんだろうって」  こう吐露する凜華さんは、ヒステリックな父母に育てられ、小さい頃からハンガーや孫の手で殴られてきた。中1のとき、父親の暴力がひどくなり、母親が蒸発。  父親はストレスでロト6にのめり込み、運送業の仕事で家を不在にすることが多く、学校のカウンセラーの先生が持ってきた給食の残りが栄養源だった。 「不登校気味だったので進学できるか悩んでいたら、学校の先生が定時制を勧めてくれたんです。そのパンフレットを見つけた父が『お前は高校なんて絶対に行けない! 俺と一緒で頭悪いんだから。卒業したらバイトしろ』って激怒。また殴られるのが怖かったから、従うしかなかった。受験もできずに卒業式を迎えて、クラスメイトが『どこの高校行くの?』って楽しそうに話しているのを見て、絶望的な気持ちになった」

ネカフェ暮らしから10代での生活保護へ

 父の命令通り、卒業後に働ける場を探したものの、15歳の中卒が働ける職場はないに等しかった。 「『高校はどうされましたか?』って面接で聞かれて『行けなかったです』って答えたら、軽く話を流されて不採用。不採用が続くのもしんどくて、本当はダメだけど、試しに履歴書に高校中退と書いてみたら、採用率が上がったの。高校に行っただけで、こんなに差があるんだって思い知った」  職場を転々としつつも月8万円ほどは稼いだが、2万円を残してすべて父親に取り上げられた。 「18歳から家には帰らず、ネカフェ暮らししてバーで働いてたけど、ストレスのせいか、急に体がお酒をまったく受けつけなくなって夜の店で働けなくなっちゃって。ホームレス状態で路頭に迷ってたときに、ボランティア団体が助けてくれて半年前から生活保護を受けています」
[教育を奪われた]子どもの肖像

生活保護を受給中

 精神的に不安定で現在は療養しているが、将来への悩みは尽きないそうだ。 「今は生活を立て直すので精いっぱい。本当はメイクの仕事をするのが夢だった。いつかメイクの専門学校に行きたいな」  高校進学を諦め、将来の夢も手放した若者がいることを見過ごしてはならない。 取材・文/週刊SPA!編集部
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