お金

“楽天離れ”に歯止めがかからず…「中華系ECサイト」と比べて致命的に弱い部分が露呈

もう一つの脅威、「Temu」とは?

さらに、この半年の間にファッション市場に、SHIENを超えるスーパーモンスター企業が登場している。それが「Temu」だ。2013年にアメリカのナスダックで上場しているECモール企業で、SHIENを超えるべく、中国から大量に安い商品をアメリカで販売する越境ECを急成長させることに成功している。 こちらもSHIENと同じ中国企業で、この半年でアメリカで2700万人のアクティブユーザーを一気に獲得。すでにSHIENのアメリカのアクティブユーザーを超えてしまう偉業を成し遂げている。 SHIEN同様、Temuがとんでもない成長を遂げられた最大の理由は、中国の商品を海外でも爆安価格で買えるECモールだからだ。その仕組みを支えているのは何か。それは、SHIEN同様優秀なアルゴリズムを備えていることに加え、中国政府からの支援があることが大きい。 現在、中国政府は自国企業が海外輸出する際の流通整備に多額のお金を投資し、支援をしている。その結果、海外にいながら中国製品を安価で買える状況が完成しているのである。 Temuは、SHEIN同様にこの流通網の力を使い、中国製品を海外で安く大量販売することができるのだ。実はこの2つのサイトが日本国内で拡大した場合、もっとも打撃を受けるのは楽天市場なのである。

楽天市場を2つの新興ECサイトが破壊するワケ

では、なぜSHIENとTemuが市場拡大した場合、楽天市場がもっともシェアを落とす可能性があるのか。それは大きく2つの理由で説明できる。 一つは、楽天市場が持っていた「客寄せパンダ」の領域を彼らがまるまる奪うからだ。「客寄せパンダ」とは、そのサイトを訪れた時に思わずカートに入れてしまう商品のことだ。 その商品をカートに入れたついでに、より高価格帯の商品を買ってしまう。楽天市場で「3,980円以上送料無料」といった文言に釣られ、ついつい他の商品を買ってしまったことはないだろうか? 「客寄せパンダ」による衝動買いをきっかけにたくさん買い物してしまう。これが従来の楽天市場の戦略だった。筆者がかつて在籍していたAmazonとの比較を言えば、楽天市場は「買いたいモノを安く、早く」ではなく、ショッピングそのものを楽しむ機能を備えているのが特徴だった。
次のページ
「呼び込みパンダ作戦」が崩壊するのも時間の問題か…
1
2
3
4
5
EC・D2Cコンサルタント、Amazon研究家、株式会社GROOVE CEO。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、新卒採用第1期生としてアマゾンジャパン合同会社に入社、出品サービス事業部にて2年間のトップセールス、同社大阪支社の立ち上げを経験。マーケティングマネージャーとしてAmazonスポンサープロダクト広告の立ち上げを経験。株式会社GROOVEおよび Amazon D2Cメーカーの株式会社AINEXTを創業。立ち上げ6年で2社合計年商50億円を達成。Youtubeチャンネル「たなけんのEC大学」を運営。紀州漆器(山家漆器店)など地方の伝統工芸の再生や、老舗刃物メーカー(貝印)のEC進出支援にも積極的に取り組む。幼少期からの鉄道好きの延長で月10日以上は日本全国を旅している

記事一覧へ
おすすめ記事