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政治、野球、宗教の話を他人としてはいけない…ネット黎明期からのルールに“新ジャンル”が加わった

ossan1-1おっさんは二度死ぬ 2nd season

早朝4時のニュースレター

 年老いてきてすっかりと生活様式が変わってしまったことで、自分もいい年した大人になったと痛感することがある。若い頃はそれこそ無限に近いレベルで眠ることができ、金曜日の夜にテンションが上がって徹夜してしまい朝方に眠りにつき、目が覚めると日曜日の夕方だった、なんてこともあった。丸一日以上も眠る自分への絶望と、あまりにもあっけなく週末が終わりつつある絶望、ツインカムの絶望だった。  それがいまや、そこまで徹夜などできないし、眠っても4時間ほどで起きてしまう。たいてい、その日のあらゆることを終わらせて0時には眠りにつくのだけど、4時には起きてしまう。困ったことに朝の4時ともなると世の中のほとんどが眠りについているのであまりやることがないのだ。  そういった事情もあって、朝4時に起きると近所を散歩することにしている。いや、散歩というよりは徘徊と表現したほうが適切かもしれない。深夜徘徊ならぬ早朝徘徊だ。  まだ夜の闇ともいえる時間、最近では冷え込みもめっきり厳しいものがあるけど、澄んだ空気の中を歩いているとなかなか爽快な気分になるのだ。遠くからは新聞配達のカブの音だけが聞こえる世界で、それでも明かりのついた二階の窓なんかがあると、早起きなのかな、それとも昼夜が逆転した引きこもりなのかなと、思いを馳せる。それだけなのだ。

早朝4時に必ず出会うハウスマヌカンオバさん

 そんな僕一人の世界とも思える早朝4時の住宅街に必ず出会う人がいる。住宅街の外れ、坂を登った少し大きな公園の入口あたりに差し掛かると必ず遭遇するオバさんだ。オバさんはハウスマヌカンみたいな恰好をして小さな犬を散歩させている。  どうやら決まった時間に決まったコースを散歩させているようで、同じく決まった時間に決まったコースで散歩する僕と決まった場所で遭遇する。そのうち、このオバさんとの関係が日毎に変化していくことが朝の楽しみになりつつあった。  最初こそは、お互いに「こいつ、いつも同じ場所で会うな」と思う程度だったけど、しばらくすると軽く会釈をする程度の間柄になった。その期間がしばらく続いたのち、今度は「おはようございます」という挨拶を交わすまでになった。  それから世間話をするようになるにはたいして時間がかからなかったように思う。 「いやね、子どもも独立して出てちゃってこの子を飼ったのよ。名前はペロちゃん」  みたいな会話を交わすようになった。それからしばらくしてのことだった、少しだけオバさんの様子がおかしくなり始めた。いや、もしかしたらそこまでおかしいことではないのかもしれない。ただ、僕にとってそれは少なからず異様で、さらにはそれに気づいてしまったことでさらにそれが異様に映るようになったのだ。
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毎朝、ニュース代わりに情報を伝えてくれるオバさん
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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