ニュース

「子供はとっくに消えた。増えたのは害獣」それでも限界集落が消滅しない理由とは

人口が減り、害獣が増えた

限界集落

標高200〜1400mの山岳地帯・大豊町。平均標高450mの急傾斜地帯で平坦地がほとんどないのが特徴だ

 人口は減少する一方で、サルやイノシシ、シカなどの害獣が増えているという。 「作物が食われることで、作り手の意欲まで食われてしまう。害獣の数が増えたいちばんの要因は、ハンターが減ったこと。ハンターも年齢を重ねて、今では鉄砲ではなく杖を持ってますよ(笑)」  時折冗談を交えて話す吉川さんだが、集落の現状は決して笑えない。住民の高齢化により、集落の環境整備ができなくなってきたのも問題だ。
限界集落

吉川さんが案内してくれた一の谷集落にある空き家には、スズメバチの巣ができて危険な状況だった

 とはいえ「この町の出身で高知市内近郊に住んでいる若者たちが、週末になると道路掃除や畑仕事などを手伝いに戻ってくるんです。定住人口ではないけど、彼らのような“関係人口”がすごく支えになっている」と吉川さんは明るい笑みを浮かべる。

大豊町の魅力を伝える「おおとよ探検隊」

限界集落

立川地区の中谷集落。車で進んだことを後悔するほどの険道の先に、空き家がそのまま残されていた

 関係人口とは、移住者でもなく観光客でもない、地域の人々と関わりを持つ人たち。大豊町と連携し地域の魅力を伝えることを目的に活動する高知県立大学「おおとよ探検隊」のメンバーたちもその一員だ。 「立川やすらぎ茶屋」という店を開き、クッキー販売を行う現地活動や立川地区の日々の様子をSNSで発信している。 「地域の方々が私たちの活動を温かく受け入れてくださり、一緒に地域を元気にしていこうという雰囲気が心地いいです」と、「おおとよ探検隊」副代表で大豊町出身の久保彩音さんは感謝を口にした。  地域活性化を望む人たち同士の良好な関係こそが、限界集落が消えない一因だろう。
次のページ
住民との価値観の相違が移住者トラブルの要因に
1
2
3
4
おすすめ記事