サイゼリヤが“日本では赤字”でも、コロナ禍前より高い利益を叩き出す理由
中小企業コンサルタントの不破聡と申します。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、「有名企業の知られざる一面」を掘り下げてお伝えしていきます。
ファミリーレストラン業界は、コロナ禍に次いでコスト高という大逆風にさらされています。すかいらーくやサイゼリヤ、ジョイフル、ブロンコビリーの収益構造も変化しつつあります。今回の記事では4社の現状をつまびらかに見ていきます。
まずは各社の営業利益率を比較します。各社決算月が異なるため、直近四半期の営業利益で比較を行います。同時にコロナ禍を迎える前の通期の営業利益率との差も併せて比べます。
なお、ブロンコビリーは2022年7月に調味料などを製造する松屋栄食品本舗を子会社化し、2023年12月期は連結での財務諸表の発表をしています。しかし、松屋栄食品本舗は売上高が8億5000万円と規模が小さく、各数値への影響が少ないものとして連結前と単純比較をしています。
コロナ禍を迎える前と比べて、営業利益率が上がった会社がサイゼリヤとジョイフル。中でも、4社の中で営業利益率が最も高い会社がサイゼリヤで7.1%でした。
コロナ前の営業利益率が10.8%で、大幅に利益率を落としたものの、未だ高利益率体質を維持しているのがブロンコビリーで6.8%です。
ブロンコビリーとは反対に、ジョイフルは0.6%から4.0%へと利益率を飛躍的に高めました。すかいらーくは5.5%から4.2%と、やや数字を落としています。
原価率の変化を覗いてみると、営業利益率の違いの一端を知ることができます。著しく原価率が変化しているのがブロンコビリー。コロナ禍を迎える前は27.3%で、4社の中で最も低くなっていました。しかし、直近四半期では34.9%まで上昇しています。
ブロンコビリーはステーキやハンバーグが主体のファミリーレストランで、一皿価格は税込みで1000円を超えるものが中心。そこに名物であるサラダバーとライス、スープ付きのセットを注文すると、プラス600円となります。他のファミリーレストランと比較すると高単価という特徴がありました。
それが原価を抑える要因にもなっており、コロナ前の高利益率を維持していた理由でもありました。しかし、エネルギー高による輸送費の上昇や、コロナ禍からの需要の急増などの要因が重なり、輸入食肉の価格が高騰しました。2021年の牛肉卸売価格は一時、2020年比で1.5倍程度まで上がっています。また、円安の進行によって購買力も下がりました。要するに材料高と円安の影響を強く受けているものと考えられます。
各社の「営業利益率」は…
牛肉価格高騰と円安の影響が大きいブロンコビリー
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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