更新日:2023年11月15日 23:03
戸田:ほかにも印象的だったのは、峰さんが修学旅行で東京に来たとき、電車で痴漢に遭ったエピソードです。痴漢に遭ったにもかかわらず、そこで「私にも部分的には女としての価値があるということなのでは」と思ってしまう……。
峰:なぜ当時はあれほどまでに「女として見られなきゃいなきゃいけない」と思い詰めていたのか、今となっては謎なんですけどね……。
でも当時は真剣に「痴漢に遭う=女として見られている、価値がある」と考えていたんですよね。そんなわけないのに。そんなふうに思っていた当時の自分を、めちゃかわいそうだな~って思います。
戸田:私自身は痴漢に遭ったことはないんですけど、「女として見られなきゃ」と追い込まれる気持ちに覚えがあります。
というのも、私は処女だった時期が長いので「自分は女性として性的な魅力を持っているのだろうか」「そもそも性的に機能するのだろうか」とずっと思い悩んでいたんですよね。
峰:戸田さんはAVデビューするまで処女だったんだよね。私小説『そっちにいかないで』でも「二十歳を過ぎてもセックスしたことがない、わたしがそんなに異常なのだろうか」と書かれていましたね。
戸田:処女をこじらせると自分に何か問題があるような気がしてくるんですよ。「乳首、変じゃないかな?」とか「毛深くないのかな」とか、いろんなことを考えてしまうんです。
人間関係もそう。中学や高校になると、それまで仲良かった子に彼氏ができたり、セックスしたりするようになるじゃないですか。でも私はそういう話の輪に入れなくてずっと疎外感を抱いていました。
峰:つきあったり、告白したり、されたりしたことは?
戸田:男の子から告白されることもあったのですが、「本当に好きと思っている人じゃないとつきあっちゃダメ」と頑なに思っていました。
母が異性とのコミュニケーションに口出しするタイプで、友達数人で遊ぶときにその中に男子がいるとすごく怒られたりバカにされたりとかしていて。そういう態度から「婚前交渉禁止」的な価値観を守らなければと自ら考えるようになっていきました。よく宗教二世(実際は熱心な二世である母の娘である三世です)だから処女を守っていたのではと誤解されるのですが、実際は母が何に対しても極端な思考に陥りやすい性格だったことによる影響大きかったです。
母には強い男性への嫌悪(ミサンドリー)があったのだと今となっては思いますが、「男の人とふたりきりになったら絶対にレイプして殺される!」と教えられたので、当時はプライベートで男性と知り合って、二人きりの空間でセックスするなんて到底無理だと考えていたんです。
峰:だったら周囲に大勢のスタッフがいるAVならむしろ安全だ、と?
戸田:そう。ただ業界に入る前は AV業界の人は全員ヤクザだと思っていたので、四肢を切られて“ダルマ”にされて、売り飛ばされると本気で思っていました……。
峰:わかります。私も同じこと考えてた(笑)。
戸田:結果的には殺されるどころか、衛生面も気を使えるし、性病検査も定期的にするので、性病にすら一度もかからなかったんですけど(笑)。でも、「別にヤクザに殺されてもいっか」とあきらめながら生きている……当時はそんな心境でしたね。