更新日:2023年12月15日 09:48
エンタメ

二階堂ふみ「『翔んで埼玉』を見た海外の友人には『半分あってて、半分誇張』って説明しました」

ようやく心のバランスが取れてきました

二階堂ふみ――ところで、二階堂さんのワークライフバランスは今、どのような感じでしょうか。 バランスが取れてきたように思います。まだまだ未熟者ですけど、10代から仕事をやらせていただいていて、経験値は確かに積み重ねているんだけど「心」が未熟なままというか。なかなか追いつかないアンバランスさをずっと感じていて。 でも、周りの同世代の友だちが仕事を始めたり、家庭を持ち始めたり、社会のなかで自分たちがどう生きていくのかっていうことを日々考えるようになり、自分自身も動物たちと暮らすようになって(※保護犬をはじめ猫など動物6匹と同居中)、生活の優先順位が変わったり、大事なものができたりして。なにより自分が「未熟」であることを受け入れられるようになったのが一歩、大人になれたことというか。 ――なるほど。 もっと若い頃は、プライドではないのですが、自分の弱さを受け入れてしまうと立ち直れない!って大げさにとらえていたんですけど、仕事とプライベートに良い意味で「距離」をつくったり、仕事以外で「こういう生き方もありだな」と思えるようないろいろな選択肢を、いろいろな生き方をしている人たちを見て知って。それこそ若い頃って、二項対立になりやすい気がしていて。 ――白か黒か、0か100かみたいな。 自分のなかに孕んでいる矛盾も含め、人間はもう限りなくグレーな生き物なんだなっていうのを考えるようになってきました。でも、しょうもないことに苛立ってしまう自分もいて……なかなか完璧にはできませんが。 ――例えばそれはどんなときですか?  母との小競り合いとか。些細な事で言い合いになってしまった時とかに、あぁ、私はまだ大人になれてないな……と(笑)。 ――二階堂さんの思い描いている30代の過ごし方を聞かせてください。 20代はけっこう苦しいなって思うことが多かったので。30代はもっと楽になっていたいという願望があります。年齢を重ねることで「自意識」がどんどん無くなって、良い意味で「私一人いなくなっても地球は回っている」と思うとすごく楽になるというか。 まだまだうまくいかないときもありますけど、それくらいいろんな目線を持つことで、物事をいろいろな角度からとらえることができるのかなって。「正解」はもう分からないから、穏やかに息を吸いたい、と思うようになりました。それは20代前半とか、コロナの前には感じなかった気持ちですね。 ――4年前、前作公開のタイミングでSPA!にでていただいたときは、好きな言葉として「泰然自若」を挙げてました。 今もそうです。いい言葉ですよね。時間に余裕ができたら仏像とか見て回りたいんですよ。全然詳しくないんですけど、つくったことに意味があるような気がして。 ――近年はアニマルライツ(※動物が動物らしく生きる権利を擁護する考え方および運動)に関する発信も積極的にされ、その一方で今作のようなディープなコメディもしっかりやられて、とてもバランス良く過ごされている感じがします。 動物や環境のことに意識が向くようになって、自分自身の生き方が大きく変わるきっかけにもなりましたが、それも「正解」はないと思っていて。人によって違うし、それぞれがそれぞれの立場でやらなきゃいけないこともある。でも、いろんな犠牲を経て、いろんな恩恵を受けながら自分が生きてきたんだ、と学ぶきっかけになりました。 アニマルライツに関する発信も、私を知っていただいてる方とか、興味を持ってくださる方に届けることができるかもしれない、みたいな思いで少しずつですけどやらせていただいてます。それもまた堅苦しく決まっているのではなく、もっと柔軟に人も動物と関わっていけるといいなって思ってます。 白か黒かはっきり決めすぎることって危険だと思っていて。みんな違う、でもみんな一緒、みたいな優しさを自覚的に持つようにしていないと、時に人を傷つけてしまうんだなっていうことをすごく感じるようになったというか。
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不便さから“物語”が生まれていた
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株式会社ラーニャ代表取締役。ドラマや映画の執筆を行うライター。Twitter⇒@Yuichitter

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