更新日:2024年01月05日 14:57
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若者の間で進む“着物離れ”…斜陽産業で生き残ることの難しさ

着物の価格が分かりづらい理由は「委託販売」の横行?

振袖を紹介するWebメディア「My振袖」の調査(「【2023年最新】新成人の振袖の決め方は?成人式に行ったの?アンケート結果を大発表!」)によると、2023年の成人式は74%がレンタルで用意したと回答。購入はわずか8%でした。最近では購入でもレンタルでもない母親からのお下がりを指す「ママ振」も主流になりつつあり、13%を占めています。 2016年の調査では購入が22%。レンタルは40%でした。振袖に限らず、着物は身に着ける機会が減ってレンタルやリメイク志向が強まっています。 これは消費者の節約意識が高まったこともありますが、着物業界にも問題がありました。古い商習慣が残っており、消費者にとって価格が分かりづらいのです。

“着物離れ”が進む理由は…

経済産業省は着物産業の課題として、不透明な価格によって消費者が販売事業者に不信感を抱き、“着物離れ”が進んでしまうことを挙げています(「経済産業省における和装振興の取組」)。販売店が根拠のない「通常価格」を提示し、「値引き」「問屋価格」「特別価格」などを提示して購入を誘引する行為が後を絶たないためです。 また、着物業界には「委託販売」が横行しています。販売店がメーカーや問屋などから買い付けるのではなく、借りて販売するという手法です。 メーカーや問屋は、着物の買取が前提ではないため、高値で販売店に貸し出します。そこに販売店が経費や利益を乗せるため、メーカー直販の場合に比べて価格が高くなるのです。メーカーから問屋に委託販売され、更にそれを販売店が委託販売するというケースもあり、直販と比べて数倍になるケースも少なくありません。 着物は生地や染め、刺繍による価値が高く、一流の職人の技が必要で高額になることは理解できます。しかし、現代の消費者は着る機会が少なく、十分な知識がありません。着物販売店は情報の非対称性を利用して稼いでいる点も否めません。メガネやアパレル業界は、その価値と価格の分かりやすさで、業界の地殻変動が起こりました。着物業界も、ビジネスモデルの転換が必要とされているのかもしれません。 <TEXT/不破聡>
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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