若者の間で進む“着物離れ”…斜陽産業で生き残ることの難しさ
中小企業コンサルタントの不破聡と申します。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、「有名企業の知られざる一面」を掘り下げてお伝えしていきます。
1975年ごろに1.8兆円のピークを迎えた着物市場は、今や2000億円程度まで縮小しています(矢野経済研究所「呉服市場に関する調査を実施(2022年)」)。
バブル期は振袖を購入した人々が、初詣や成人式で着飾る姿を見かけました。しかし、今では晴れの日にレンタルするのが主流になりつつあります。
着物を販売する会社は、生き残りをかけてそれぞれが新たな取り組みを始めています。
大胆な事業転換を進めているのが、「東京きもの愛」などのブランドで着物や和装品の販売を行うヤマノホールディングス。2023年12月1日に学習塾を経営する灯学舎を買収したのです。
灯学舎はやる気スイッチグループのフランチャイズ加盟事業を展開しており、神奈川エリアを中心に17教室(2023年10月末時点)あまりを運営しています。実は2020年にヤマノ自身がやる気スイッチグループのFC事業を開始しており、千葉県や茨城県を中心に32教室(2023年10月末時点)を展開していました。
今回のM&Aによって、教育事業の規模拡大に向けた事業基盤を構築したのです。2024年3月期の教育事業の売上高は、10億円を突破する見込みです。
ヤマノの主力である和装宝飾事業は、2023年4-9月の売上高が前年同期間比2.9%減の47億4300万円、営業利益が同66.0%減の4700万円でした。大幅な減益で上半期を折り返しています。売上減に加え、人件費や採用費が増加し、利益を圧迫しました。
ヤマノの和装宝飾事業はコロナ禍で売上高が1割以上縮小し、その後増収を重ねて回復基調にありました。しかし、今期は上半期が減収となっていることから、転換点が訪れた可能性があります。
もう一つの主力事業である、美容事業も苦戦中。2023年4-9月は9割近い減益となりました。これも人件費の増加が主要因です。
ヤマノは今期に和装宝飾事業と美容事業において、人材への投資を加速。来期以降に十分な売上増ができなかった場合、利益率の低下や赤字が免れません。新規事業である学習塾と既存事業への投資を行い、2024年に勝負をかけました。
「やる気スイッチグループ」のフランチャイズに加盟
新規事業で2024年に勝負をかける
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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