仕事

年1億2000万円を売り上げる77歳営業マン。営業未経験でもトップ成績を収める“高齢者ならではの強み”とは

“人生の先輩”として聞き役に徹し、後追い営業はしない

妖精の森

2022年7月に誕生した「藝術(アート)樹林葬 『妖精の森』」。影絵作家・藤城清治氏の作品「生命讃歌」をモチーフにしたステンドグラスが特徴の樹木葬墓地

 72歳で“新人”の高田さんは、契約書の使用約款に記載されている埋葬料の説明を怠り、お客様から叱責されたミスもあったそうだが、わからないことは周囲の人へ聞いたり、現場で接客したりしていくうちに要領をつかんでいったとのこと。  営業トークでは「お客様第一で、できる限り要望を聞く姿勢」を心がけていたそうで、お客様の自主性を尊重し、“しつこい”と思われないような人当たりと、寛容な接し方を意識した結果、自然と受注につながったという。 「お墓を売るという特殊は商品を扱う職場であるにもかかわらず、未経験の私が何とかここまでやってこれたのは、町田いずみ浄苑のスタッフ全員がシニアの私を暖かく受け入れてくれて、陰に陽に私を助けてくれたからであり、深く感謝しています。本当に良い職場に恵まれて良かった」  契約社員となった現在は、会社から割り振られたアポを1日に2〜3件こなし、成果を出すために奮闘する高田さん。  その成約率は約7割というから驚きだ。  どのような営業のコツがあるのか尋ねたところ、「シニアだからこそ、お客様に信頼してもらえる存在になり、売ることに対して執着しないこと」だと説明する。 「樹木葬は墓石よりも安いぶん『売りたい』という執着心が強いと、お客様から嫌がられてしまいます。私の場合は物を売る感覚ではなく、“人生の先輩”として雑談を交えながら、樹木葬の特徴や種類、管理費や維持費がかからない点などをお伝えしていきます。  そのなかで大切にしていたのは『お客様への傾聴』です。お客様は、いろいろなご意見、お考えをお持ちです、まずはじっくりとお話に耳を傾ける。お墓を購入するには必ず理由があり、差し支えない範囲でお聞きしながら、信頼関係を構築できるように努めていますね」

元気に働くシニアの姿は会社の「アイコン」になっている

高田さん 特に最後のクロージングも意識せず、メールやフォロー架電といった後追い営業もやらないスタイルで結果を残せるのは、「シニアならではの『安心感』と『アイコン的要素』があるからだと、高田さんは続ける。 「アポでお会いしたお客様とは、基本的に1度だけしかお話しません。その際に必ずお伝えするのが『他の霊園もご見学され、十分にご検討した上でもし当苑の樹木葬に興味を持たれたら、お気兼ねなくご連絡ください』ということです。それ以外は一切の営業活動をしていないのですが、だいたい3〜6ヶ月くらい後になって連絡が入り、正式に契約へと進むケースが多いですね」  今後、少子化高齢化や独身人口の増加など、さらに樹木葬のニーズが高まっていくことが予測されるが、「社会的な背景から樹木葬への関心が高まっていくなかで、自分がその一端を担う仕事に関われるのが大きなモチベーションになる」と高田さんは展望を述べる。 「お客様から、『高田さんに樹木葬をすすめられたから契約した』と言ってもらえるのが嬉しいんですよ。また、高齢なのに元気に働いている姿を見て『とても勇気をもらった』というお声もいただくことがあり、それが自分の原動力にもつながっているんです」  年齢に関係なく、仕事へ取り組んで成果を出す。75歳を超える後期高齢者の活躍ぶりは、人生100年時代における働き方を考える上で、希望の光となるのではないだろうか。 <取材・文・撮影/古田島大介>
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている
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