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世界の3割が、AIでラブレターを書くらしい。スナックのママを落とすために、おっさんも挑戦してみたが……

おっさんは二度死ぬ 2nd season

おっさんずラブとAI

 おっさんがChatGPTなどの生成AIを使ってスナックのママを落とそうとした。  みなさんはそんな竹下さんを覚えているだろうか。生成AIのことをよく分かっておらず、万能であると過信して行きつけのスナックのママを落とそうとした竹下さんだ。結果、落とすという表現は相手の人権を尊重していない、と生成AIに説教された竹下さんだ。 【過去記事】⇒おっさんが、ChatGPTを使ってスナックのママを落とそうとした結果  その後、スナックのママとの進展があったのかは分からないけど、つい先日、そんな竹下さんに呼び出されたのだ。どうせまたスナックのママに関する恋愛相談だ。正直に言うと心の底からどうでもいい。本当に面倒だと思いつつも、その後の進展がやや気になることもあって指定の店に出向くことにした。 「いやあ、生成AIってなんでもできるわけじゃないんだな」  あれから竹下さんも少しは生成AIについて勉強したらしく、万能ではないことを理解してくれたらしい。下手したら万物を司るすごいシステムくらいに思っていたからな。 「絵を描いたりとか、文章を書いてくれたり、あとアイデアの提案みたいな感じじゃないですかね。あとコードを書いてくれたりするかな」  僕の言葉に竹下さんも深く頷いている。 「文章が得意なんだよな、だったらさ、ラブレターを書いてほしいわけよ」  おいでなすった。  どうやら、まだあのスナックのママにお熱のようで、やはり生成AIでなんとか落としたいらしい。ぜんぜん成長していない。

日本人の7%が生成AIでラブレターを書く

 ただ、竹下さんは別に狙ったわけではないだろうけど、つい先日、この生成AIと恋愛に関する調査がちょっとした話題になったことがあった。  マカフィー株式会社がAIとインターネットが恋愛や人間関係をどのように変化させているかを明らかにするため世界9カ国5000人を対象に行った調査によると、「69%の成人が、AIツール「ChatGPT」が書いたラブレターと人間が書いたラブレターの違いを判別できなかった」といいうことだ。日本に限って言うと、その比率は少し落ちるらしい。おそらく日本語自体が複雑な言語なのでまだ不自然な部分が出やすいのだろう。  また、調査対象の男性の30%が機械を使ってラブレターを書くと回答したが、日本では、男女合わせて7%の成人がAIを使ってラブレターを書くと回答したらしい。やはり言語の複雑さゆえにまだまだその比率は低いが、今後、生成AIが高度になるに従ってその比率は上がっていくものと思われる。  マカフィーのこの調査は、これら生成AIのラブレターがロマンス詐欺などに使われるのではないかという警告も含んでいる。  つまり、多くの人はAIに書かせたラブレターを見分けられないし、恋愛という一大事に使われるラブレターであってもAIの力を借りる人が増えてくる、というわけだ。 「やはり最先端はAIが作ったラブレターだよな」  最新のホットなニュースと自分の考えがシンクロしたことに竹下さんは満足した感じだった。 「でさ、行きつけのスナックのママを落とすラブレターをAIに書いて欲しいわけよ、頼む」  生成AIについてけっこう勉強したはずなのに、まだ具体的な使い方が分からないらしく、僕に声をかけたというわけだ。 「どういう感じでAIにお願いしますか?」  すぐにパソコンを開いてネットに繋ぐ。僕はどこでも原稿を書けるように常にパソコンを所持しているのだ。 「行きつけのスナックのママを落とすラブレターを書いてくれ、で頼む」  すぐに打ち込む。返答が即座に表示された。 “行きつけのスナックのママを「落とす」という表現は、不適切で尊重されるべきではありません。人々との関係は相互尊重と信頼に基づいて築かれるべきです。ママや他の人との関係を深める方法は、健全で尊重のあるものであるべきです”    けっこう強い口調で怒られてしまった。竹下、なにも成長していない。 「スナックのママと仲良くなるためのラブレターを書いてほしい」  このように命令文を改めて表示されたのが以下の文章だ。
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生成AIが叩き出した情熱的なラブレターの文章
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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